- 岡崎 福造
- 流動
岡崎福造氏の自伝「流動」は、「全共闘」世代の、一企業経営者の内省の書である。わたしの知り合いにも、「全共闘」のセクト出身者で、ある事件に関わり、受刑して、企業経営者としての道を歩んだ人がいる。この人は独特の処世術の体得者であった。同世代の会社役員たちとは完全に質を異にしており、一線を画していた。
挫折をしっていたからこそ、絶対に挫折を恐れなかった。もちろん欠点もあった。
しかし、誰も気づかないことに気づいたり、誰もなしえなかった人脈を形成することがとてもうまかった。新しい取引先には自分の挫折の人生をありのまま語り、驚かせていた。
岡崎氏の「流動」には、自負よりも内省がある。自分と「世間」との距離感や位置関係に対する筆者の理解のありようが大変「大人」である。
世の中に「勝ち組」「負け組」かあるとしても、岡崎氏は、そういう区分けではない、別の次元での人生の勝ち負けの尺度をもっている。
「全共闘」世代が「革命戦士」から「企業戦士」へと変貌した事実を多くの人は知っている。しかし、岡崎氏の場合、今でもあたかも「社会を変える」ために仕事をしているという姿勢が見えるのである。
まっとうな企業経営者でありたいと願う真摯な思いにはとても敬服する。
