普天間問題を巡る日米の報道について | ワシントン通信 3.0~地方公務員から転身した国際公務員のblog

普天間問題を巡る日米の報道について

 最近の普天間飛行場の移設問題を巡る日米の報道を見ていると、どうも釈然としません。ワシントン・ポストが鳩山首相をキチガイ(increasingly loopy)扱いしたコラム を載せたり、それを面白おかしく紹介する日本側の新聞などなど。もっと客観的に論点を整理したり、建設的に解決策の提案をしたりという報道にはほとんどお目にかかれない(とは言っても、日本側の報道はもっぱらインターネットに頼っているので、全てを網羅しているわけではありませんが)。そんな中で、フォーリン・アフェアーズ誌の最新号に掲載されているジョージ・パッカード氏の「The United States-Japan Security Treaty at 50 (日米安保50年)」と題された論文は、とてもバランスの取れた内容で共感する点も多いので少し紹介したいと思います。

 パッカード氏の論文は、日米安保の歴史的経緯や日米の密約問題にも触れていますが、普天間問題に絞って整理すると、以下のような記述があります。

1. いい解決策のひとつは、海兵隊の普天間飛行場と嘉手納空軍基地を合体させること。ただし、空軍と海兵隊との縄張り意識がこれを阻んでいるよう。
2. そもそも海兵隊が沖縄に必要なのか?海兵隊が沖縄にいることでいかなる脅威を抑止しているのか?(この質問にはアメリカ側も答える必要がある)
3. アメリカは、この問題で鳩山政権にもっと時間を与えるべきだ。アメリカは、日本の異なる政党が安保問題で独自の政策をもつことを認識すべき。
4. ホワイト・ハウスは、米軍基地問題などの対日政策に文民統制が働いていることを明確にすべき。
5. この問題で、アメリカ側は低姿勢をつらぬくべき
6. アメリカと日本は安保を取り巻く様々な問題について、包括的な見直しをすべき。その上で、海兵隊を沖縄に駐留させる戦略的必要があるなら、それを公にすべき。普天間問題は、安保全体の問題のごく小さな一部に過ぎない
7. アメリカ政府は、国内の米軍基地を縮小したいという日本側の要求を尊重すべき。ドイツ、韓国、フィリピンの米軍基地を縮小したように。
8. 日米安保は大事ではあるが、より大きな日米同盟の一部に過ぎない。アメリカは、地球環境問題、人権、核の拡散、テロ問題などでも日本と共同で取り組むことが大事。
9. 米軍基地の縮小と引き換えに、日本は日米両国の安全保障や世界平和にもっと貢献しなけらばならない。
10. 日本は、東アジア共同体構想をアメリカ抜きに進めてはならない。
11. オバマ大統領と鳩山首相は、広島とパールハーバーを共に訪れるべきだ

 ジョージ・パッカード氏は、ワシントンにある名門ジョンズ・ホプキンス大学の高等国際問題研究大学院(SAIS)学院長を務めた方で、現在は米日財団の理事長。日米双方に幅広い人脈を持ち、日本通としても知られています。鳩山首相もオバマ大統領も、こういう人の知恵を借りるべきではないか。少なくとも両国のリーダーたちは、この論文には目を通して欲しい。日本のマスコミも、ワシントン・ポストの例のコラムなんかより、こういう論文をもっと大々的に紹介するべきだと思うんですけど。