ドバイ急速発展の秘密 | ワシントン通信 3.0~地方公務員から転身した国際公務員のblog

ドバイ急速発展の秘密

 ドバイの空港で買った「Sand to Silicon - Going Global」というこの本(↓)。ドバイからワシントンまでの機内で読み終えました。オックスフォード大学のサンプラー氏とロンドン・ビジネススクールのアイグナー氏の共著で、副題は「Rapid Growth Lessons from Dubai (ドバイ急速発展の教訓)」とあります。砂漠の田舎町から世界中が注目する未来都市へと、短期間で変貌を遂げたドバイの秘密がいっぱい詰まっていました。


 僕が一番興味深いと思ったのは、ドバイの発展モデルを、シリコン・バレーシンガポールと比較していること。この本によれば、シリコン・バレーの発展のきっかけは、スタンフォード大学やヒューレッド・パッカード社を中心にした民主導(ボトム・アップ型)のネットワークに基づく有機的な成長にあったらしい。方やシンガポールの発展は、リー・クアン・ユー政権の綿密な開発計画に基づく官主導(トップ・ダウン型)であったと位置づけています。そしてドバイは、シンガポール型に近いとしながらも、政府が模範を示しながら市場や民間の切磋琢磨に任せるという新しい発展のモデル(ミドル・アウト型)だとしているのです。

 この本のもうひとつの特徴は、ドバイの発展をアセット・マネジメント(財産管理)の視点から論じていることでしょう。ドバイの発展は、アセット・クリエーション(財産構築)、アセット・アクセラレーション(財産増幅)というステージを経て、アセット・レバレッジ(財産の相乗作用)という時期に達しいているらしい。この時期には、数々のアセットが競争や協調することにより大きな相乗効果を産むのです。海へ、砂漠へ、空へと数十年で急速に伸び続けてきたドバイ、このところの地球規模の不況でその成長速度が鈍ったとしても、斬新で魅力的なアセットの蓄積による相乗効果は当分衰えそうもありません。