「お酒さえ飲まなければ、いいひとなんだけど」
子供の頃に聞いた母親の言葉です
*
わたしの父親は毎日お酒を飲んでは
くだをまいていました
同僚の悪口
会社の悪口
ご近所さんの悪口
親戚の悪口
それが終わると
家族に当たり散らします
手が出ないだけマシ
お酒さえ飲まなければいいひと
そう言って
母親はずーっと父に付き合っていました
*
そうなんだ〜
よそのお家はもっと大変なんだって
○○さんちのお父さんは殴るんだって
それに比べれば、うちはマシな方なんだって
ガマンできないわたしは
とってもダメな子なんだ
もっとちゃんとガマンできるように
母ちゃんみたいにならないといけないんだ
子どものわたしはそんな風に考えていました
*
だけどね
そのお酒のせいでしなくてもいいガマンを
わたしはたくさんしてきた
母親は「お酒さえ飲まなければ」って言ってたけど
たしかに彼女にとってはそうだったかもしれない
だけど、わたしにとっては違った
お酒を飲む父親がキライだった訳じゃない
酔っ払ってくだをまく
悪口ばかり言う
大声を出す
他人に迷惑をかける
わたしを睨みつける
そして、お酒を使って私たちを試す
それがたまらなく嫌だった
母親の価値観と
わたしの気持ち
あの頃は
どうしたらいいのか
どちらが大切なのか
乗り切るためには口をつぐむことしかないと思っていたけれど
それが最善だと教えられたし
それしか知らなかったけど
いつもなにか違うと思っていました
*
えらい‼︎
すごい‼︎
ちゃんとわかっていたんだね
すごいよ、わたし
ガマンできないことはガマンしなくていい
イヤなことはイヤだって言っていい
親の価値観は引き継がなくていい
そんなものは捨てていい
やっと子どもの頃のわたしを抱きしめることができる気がします