思わずうふふ…

そんな夜になりました。




長崎からの鯛の刺身、

柵で買ってきたそれを一部はそのままお刺身で

大半は漬けにしました。



けいあゆ流の漬けは

ちょっとだけ九州風に

煮切り味醂と甘口醤油のタレに当たり胡麻をたっぷり加えたものに

一時間ほど漬け置いて作ります。



鮮度のいいお刺身も美味でしたが

漬けでいただくご飯もとても美味しくて

軽く一膳平らげたくらいです。



実はメインは

酢の代わりにレモンをたっぷり使った

夏仕様の豚ヒレ肉の酢豚で、

なかなか爽やかな美味しさでしたが




最後に少しだけおかわりしたご飯でいただく

白だし仕立ての鯛茶漬けは

また格別で



うふふ…はこの一膳から生まれました。



海苔とか大葉とか用意の薬味はすっかり忘れ

飲もうと思っていた白ワインもナシで


鯛茶漬けにしあわせ満喫のけいあゆでした。


今のところ悩みも屈託もないけいあゆですが

たとえそれらが重くのしかかっていても


美味しいものがあれば

こころはすぐにも晴れる


まことに

「姨捨山の月はいかなる人の見けるにか」

と中宮定子が清少納言に向かって言い放った通り

「易き息災の祈りななり」

といったところです。



一夜明けた今朝も


その余韻は残っていて

うふふな夜のお楽しみは

反芻しても味わえるもののようです。



そんな朝メシ前のひとときに

前夜から冷蔵庫でゆっくり戻しておいた椎茸を

甘辛く煮含めて常備菜作りです。



茶菓より先の一口はその椎茸甘辛煮のお味見。



ブランチには

ブロ友さんのごはんに触発されて

オムレツを焼きました。


先般手に入れて重宝している小さな小さなフライパンで


卵一個のオムレツもふっくら焼けます。
中身はチーズと迷って
先日作った牛挽肉と玉ねぎのソテーにしました。






叩き胡瓜の胡麻酢漬け、えのき茸のピリ辛なめ茸など常備菜も取り合わせた

ごちゃ混ぜブランチですが



こんなブランチもワルクナイでしょ?

これらをおかずに

ご飯も半膳ほどいただきました。



大暑の今日は

ずうっとエアコンで26〜27℃の室内にいます。

外は真夏の空に強い日差し。

セミたちが絶え間なく鳴いて



窓に切り取られた光景を見る限り

平和な時間が流れています。



夕暮れには少し散策してみたいな

と日が傾くのを待っているところです。



<けいあゆの、ちょっとだけ古文>

久しぶりに定番の古文を読み直してみましょう。


『枕草子』二百五十九段


 御前(おまへ)にて人々とも、また物仰せらるるついでなどにも、「世の中の腹立たしうむつかしう、かた時あるべき心地もせで、ただいづちもいづちも行きもしなばやと思ふに、ただの紙のいと白う清げなるに、よき筆、白き色紙(しきし)、みちのくに紙(がみ)など得(え)つれば、こよなうなぐさみて、さはれ、かくてしばしも生きてありぬべかんめりとなむおぼゆる。また高麗(かうらい)ばしの筵(むしろ)、青うこまやかに厚気が、縁(へり)の紋いとあざやかに、黒う白う見えたるを、ひきひろげて見れば、何か、なほ、この世はさらにさらにえ思ひ捨つまじと、命さへ惜しくなむなる」と申せば、「いみじくはかなき事にもなぐさむなるかな。姨捨山(をばすてやま)の月は、いかなる人の見けるにか」など笑はせたまふ。候(さぶら)ふ人も、「いみじうやすき息災の祈りななり」など言ふ。


中宮さまの御前で

女房たちのとりとめのないお喋りの中、

清少納言は

「どんなに思い屈した折も、

白く美しい紙や筆

あるいは上等の筵(見事な畳)など手に入れると、

死にたいとまで思った気持ちは何処へやら

命が惜しくなる」

そんなことを口にします。


中宮さまはお笑いになって

「ずいぶん簡単なことで気持ちが慰まるのね、

(みんなあなたみたいだったら)姥捨山の月はどんな人が見るのかしら?」

仲間の女房たちも

「(清少納言のは)ずいぶん簡単な息災の祈りなのね〜」

と呼応します。


姨捨山は

深沢七郎の『楢山節考』にも描かれているように

古来老人を遺棄する悲しい風習のあった場所で


我がこころ慰めかねつ更級や

姨捨山に照る月を見て


と『大和物語』に

妻に強要されて叔母を捨てる男のやりきれない気持ちの表象として詠まれ、

また『古今和歌集』にも

やまぬ望郷の思いを詠んだ歌として採られて以来、


姥捨山の月=慰めきれない心

として定着した地名です。


中宮さまの発言はそれを踏まえてのひと言だったわけですね。

そうした

教養を共有するもの同士の機知に富んだ会話に

惹かれてやまないけいあゆです。


しかもこのお話には後日談がありますが


…それはまたの機会にいたしましょう。




今は

東京から信州へ向かう高速道路のパーキングエリアに「姥捨」PAがあって


そのよく整備された公園から眺める景色が見事ですし








花々で彩られたパーキングエリアは

姨捨伝説とは無縁の明るさです。



其処で食べたアジフライが

カラリと揚がってなかなかの美味でした。

長野は海なし県ですから冷凍ものでしょうけれどね。