通学路の脇、グランド近くにカラスがいて、近づくと慌てて飛び立った。そこには小さな猫の死骸がありピンクの内臓がこぼれていた。血は見えない。作りもののような死骸。

小学生のころ校庭の一隅で、犬に腹を噛みつかれたのか腑をこぼれるように晒しながら塀に坐る猫のすがたを見た。身じろぎもせず対峙する猫。自分の身に起こったことを猫は気づいていないかのようだった。

ふと、
道端で死んでいる子猫も自分が死んだことを知らないのだ、
と思った。

孫の中学を訪問する道すがらのことである。門の警備員さんに「市に知らせて猫をよろしく」と伝えた。
面談を終えての帰り道、日差しがいっそう眩しさを増す中子猫は消えていた。子猫にも私にもはじめから白昼夢であったかのように。