作文堂では、今月から三回、『桃太郎』を題材にしています。東京と鎌倉共通です。
年が新しくなった機会に、抜群の知名度を誇る物語を選びました。
さて、『桃太郎』は文豪たちにとっても格好の題材になっていることはご存知でしょう。
様々な視点、切り口、展開などありますが、芥川の『桃太郎』は中でも指折りの面白さです。
というのも、押しも押されもせぬ桃太郎が一転して悪役(力任せの脳足りん)になり、鬼たちは無垢な被害者として登場するのです。
以下、山場です。
「桃太郎はこういう罪のない鬼に建国以来の恐ろしさを与えた。鬼は金棒を忘れたなり、「人間が来たぞ」と叫びながら、椰子の間を右往左往に逃げ惑った。
「進め!進め!鬼という鬼は見つけ次第、一匹も残らず殺してしまえ!」
桃太郎は桃の旗を片手に、日の丸の扇子を打ち振り、打ち振り、犬猿雉の三匹に号令した。犬猿雉の三匹は仲の好い家来ではなかったかもしれない。が、飢えた動物ほど、忠勇無双の兵卒の資格を具えているものはないはずである。彼等は皆、嵐のように、逃げまわる鬼を追い回した」
なぜ、芥川はこのような価値の転倒を施したのでしょうか?
子供たちは思い思いに読み解いています(現在進行形です。家でもお母さんお父さんと話してね)が、今回は小六男子の着想に感心しました。
タイトルは「道草のススメ」
芥川にとって、世の中のルールは人間の都合によるもの。たとえば、「道草をするな」というルールも、まあ大人の(特に先生たちの)都合によるものでしょう。問題が起きないようにするための予防線です。で、このような御都合主義日和見主義のルールを破ってみましょう。そんなメッセージを芥川は僕たちに送っている。「道草をするな」なら、敢えて道草をしてみませんか?ルールを破ってみることで、本物のルールが分かりますよ。
こんな概要です。
じゃ、本物のルールってなんだろう?
ここはまた、現在進行形です。