「恨み」の処方箋

 

 

 これを書きながら不意に襲ってきた。

 そういえばオレ、彼奴になんども裏切られたよな。口先ばっかりの彼奴、ぶち殴ってやろうかな〜。

 

 あ、ヤベ。

「だまされるオレが悪いか〜」

 と反省。ちっちぇな、オレ(シュン…)。

 

 というところで、前回のお約束、「恨み」の処方箋です。

 

 

 恋愛と名誉に共通するのは、あれやこれやと勝手に決めていること。

 

 恋人には…こうして、ああして、って言ったこともあるし言われたこともある。会話の頻度、お祝い、キス、服装、そして歩き方。

 みなさん、どうですか?

 

 名誉か…東大医学部時代の仲間、どうしているかな…?年収とかスゲーだろうね。大学生のときすでに出世レースからドロップアウトしたぼくは、むしろ観客。気楽だわ〜(でも貧乏〜〜)。

 

 勝手に見込んでいたスゲーオレサマ(アタイ)。それに見合った、これまた勝手に決めていた数々のこと。それができなくなる!

 ここに「恨み」が産まれます。

 

 おもしろいことに、僧堂(僧侶になるための修行場)では、修行僧たちには予定が知らされていないそうです。

 

 

 

 

 というのも、僧堂ではすべてが一蓮托生でして。万が一、老師から叱責を受ける仲間がいたときには、予定がすべておじゃんになるそうです。

 もし、予定が知らされていたら…

「自分は休みだったんだぞ!数ヶ月ぶりに恋人に会えるはずだったんだぞ!」

 なんて恨んでしまいそうですよね。

 

 恨みやすい心ってのは、あれやこれやと過度な期待・予定をしたがる。恋人や仕事を自分の思い通りにしたがる。

 いっぽうで、そんな大層なものがなくても、悦べる心もぼくたちにはある。

 

 モテ男でなくても、モテ男でも、巡り合わせは対等。

 キスできる相手がいるだけで、もう仕合わせですよね(ヤッホー!)。

 東大卒なんてのが順風になるときもあれば、逆風になるときもある。

 笑い合って仕事できる仲間がいるだけで、もう仕合わせですよね(メルシー!)。

 

 すべては身の丈に合った作用なんですね。

 背伸びをしすぎると事故が起こる。事故が起きたら、それを恨みにせず、戒めにしましょう…ってところでしょうか。

 

 「なにはなくてもあるだけでいい」

 

 そんな大層な自分ってのに固執していなくてもいいじゃない?
 仏教は、「ちっぽけな自分ってやつだからこそ」、ってところを大切にしてくれるんですね〜

 ブッダは、地位も収入も名声もないぼくみたいなのにも、「お!よくやってるな!」と声をかけてくれているようですね(「コラッ!」もありますが)。

 

 それにつけても、ぼくたち人間ってやっかいな生き物ですね。

 

 

 

 カメに心はありやなしや?なんて問題も当のカメから出て来るはずもありません。

雨だろうが快晴だろうが曇りだろうが、いつも、「のんびりいそいそ」って感じでしょうか?

 カメのほうがよほど悟ってんじゃん、と思ってお寺を後にしました。

 

 

臨済宗建長寺派 伊勢原市能満寺 松本隆行和尚 (RKI)

 

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