手伝いと言っても
BBQがメインで、
私たちは泊まらない。
夕暮れ前に終わった
BBQの片付けまで
手伝って、
あとは帰るだけ。
彼の友達でもある
コーチが
手伝ってくれたお礼にと
私たちを
近くのカフェに誘った。
偶然
入った
名も知らない店だったのに、
まるで
示し合せたかのような出来事――
私たちが
お店に入って
しばらくすると
お客さんが入って来た。
姿は見えないけど、
それは女性の声だった。
その声―――
私は知らないけれど、
彼は・・・
その声に反応した。
彼にとっては
聞き覚えがある声――
そうだったのだろう・・・
まだ
私は気づいてはいなかった。
席に案内されて
店の奥へと
入ってきたのは、
男女二人。
だと思ってた・・・
寄りにもよって
空いていた
隣の席に通されて,
何気なく
ちらりと
横を見てみた。
!!・・
(オーナー!!!)
その隣に
座る女性は
見えないけど、
眠った子どもを
抱いている。
オーナーって
結婚してたんだ
なんて
何の疑いもなく、
ただ考えることは
私と私の隣に座る彼の事・・・
もし
”夫婦”だとわかったら、
既婚者だと
オーナーに知れたら・・・
思い浮かんだ顔――
・・どうしよう・・・――
一人
そわそわしていると、
オーダーのために
振り返ったオーナーが
こちらの
テーブルに気が付いた。
だけど
オーナーの
視線は
何故か私ではなく
夫に向かってる・・・
どうして?
そのうちに――
「どうしたの?
お兄ちゃん。」
オーナーと一緒にいる
女性も振り返って
こちらを見た。
どこかで見たことある顔・・・
あれは確か・・・
ユノの友達?
彼の昔の写真には
いつも彼女が写っていて、
結婚前は嫉妬したりしてた。
そのたび、
”男友達みたいなもんだよ。”って
彼は笑った。
実際に会ったのは
私たちの結婚式で
一度だけ・・・
「ねぇ・・?・・・ねぇ・・・・??
・・・・ユノ?」
何度も
呼びかけたのに、
全然気づいてくれない。
余計なことが
知れてしまう前に
私は
早く帰りたかった。
「ねぇっ・・・」
腕を小突いて、
やっと気づいた。
「っ!?」
「?・・どうしたの?」
どうして
そんなに驚いてるの?――
「いや・・・何も・・・」
私が呼んでいることに
気付いた時の顔・・・
明らかに
動揺しているのに
隠そうとしてる。
「彼女って・・・」
ユノの友達?似てるけど・・――
「あ、あぁ・・そうだな・・」
「?挨拶しなくていいの?」
「人違いだろ・・・」
彼が伏せるより先に
彼女も視線を戻してた。
分かり合ってるみたいに・・・
私は何も
知らなかったから――
彼の親友が
オーナーの妹なんて偶然、
ありえないって思ってた。
それより
オーナーに何か言われる前に
帰りたい。
「そう?・・・
ねぇ・・そろそろ――」
「あぁ・・・」
お店を出ようと
歩きだしたら、
微かに聞こえた。
「パパ?・・・」
ドキッとした。
寝起きの声に――
「パパじゃないのよ。」
間違いだと
言い聞かせる女性。
振り向かないけど、
呼ばれた本人は
気付いてる――
まさかねって
思いたかったのに、
驚きのあまりでか、
固まってしまった
彼の表情で
確信に変わった。
この子は
”パパ”と呼んだ
あの子・・・
相手の顔は
絶対に見ないと
心に誓っていたから、
知らなかった。
どこかで
会うことがあっても
気付かずに
過ぎることができるため・・・
なのに
知ってしまったじゃない・・
彼女は
あなたの親友で、
しかも
オーナーの妹――







