20時に待ち合わせ――
約束した時間より
ずっと早く仕事が
片付いた。
・・無理矢理
片付けたのかな・・
早いけど
残っていると
他の仕事が
出て来て帰れなくなると
いけないと思ったから
もう出ようと思った。
立ち上がった
タイミングが
チャンミンと重なった。
あれ?
チャンミンも
終わったの??
同じ場所に
行くのに
私たちは
前後の別の出口から
フロアを出た。
打ち合わせは
してない・・
体が勝手に
そう動いてた。
会社のビルの
エントランスで
一緒になって
目を合わせて笑う。
ここもまだ
誰かが
見ている可能性が
あるのにね・・
「予約
8時にしちゃったけど
どうしよう?」
「ゆっくり
行けば
そのくらいに
なりますよ。
多少は融通きくでしょ。」
「うん。
そうだね。」
「・・・」
「・・・」
少しの沈黙に
隠している
テレが増す気がした。
自分から
誘ったんだけど
なんかこうゆうのって
照れる。
何を話そうかと
考えていると
エントランス前に
停まっていた
高級車の窓が
開いた。
ん?・・
「チャンミン――」
車の中から
チャンミンを呼んだのは――
「社長――」
だよね・・
車から
降りてきて
立ち姿だけで
私は恐縮してしまうけど
チャンミンは違う。
それもそうか・・
”お父さん”
だもんね・・
「帰りか?」
「えぇ・・」
「悪いが
運転手頼めないか?」
「兄さんが行くはずでは
なかったんですか?」
「そうなんだが・・」
社長の呆れた顔――
チーム長って
弟のチャンミンだけじゃなくて
社長にもそんな顔
させちゃうんだ?
「怪我をしたそうだ。」
「怪我!?」
怪我!?
チーム長が?・・
声に出来ないまま
心配で聞こえてくる
話しに集中する。
「あぁ大したことはない。
手首の捻挫だ。」
良かった・・・
「だから運転は
出来ないそうだ。
代わりに頼めるか。」
「運転手は
どうしたんですか?」
社長の頼みなのに
断わろうとしてる
チャンミンってすごい。
息子じゃないと
出来ないよね・・
運転手は
”帰した”と言う
社長に仕事なのだから
呼び出せばいいと
尚も承諾しないチャンミン・・
私の方が
恐れ多くなる。
「僕も
約束がありますから。」
そう言い放ったあと
私を見るから
社長の視界にも
私が入った。
「約束?」
社長の目――
チャンミンに
似てる。
”仕事よりも
重要な約束か”と
見透かされているような
その感じ・・
「部長・・
また次回にしましょう・・」
「は?
何言ってるんですか?」
何って・・
この状況みたら
わかるでしょ?・・
「・・わかりました。」
嫌々ながら
返事をして
私を見ることもなく
運転席に
乗り込んでいった。
「すまないね。」
社長が
私に優しく微笑んだ。
「いえ・・・」
威圧感があるのに
おおらかで
優しそうな人に思えた。
チャンミンも
行っちゃったし
どうしようか・・・
浮かんだのは
昨日対処した
現場のことだった。
トラブルがあった
現場はその日のうちに
再度訪問するのが
極意って教わったから・・
昨日
行けなかったから
見に行ってみようと
思った。
今日は退社したし
個人的に行けば
いいよね。
一つのズレが
大きく未来を変えていく。
ズレではなく
それがあるべき姿だった
のかもしれない・・
今夜
チャンミンに
気付き始めた
想いを告げるはずだった。
だけど―――
「?〇〇さん?」
現場に行ったら
チーム長に
会ってしまった。
ここから
始まる・・・
私の本当の
あるべき未来が――





