車内では
3人とも一度も
口を利かなかった。
どんな会話が
出来たんだろう・・
私には浮かばなかった。
私たちは
集合時間から
1時間も
遅れての到着だった。
盛り上がっている中に
”遅れてごめんね”って
無理にテンションを
あげて
溶け込んだ。
天気も良くて
空気も美味しい。
綺麗な川のせせらぎが
癒してくれるはずなのに
出てくるのは
ため息ばかり・・
苦しかった。
「ね、ユチョンくん
テンション高くない?」
私も
そう思っていた。
友達は
何かいいこと
あったのかなって・・
違うよ・・
ユチョンは
無理してるの。
「そう言えば
彼女連れてくる話しじゃ
なかった?」
飲み会のとき
BBQに彼女を
連れて来てと
言われていたんだよね。
今日、みんなに
私が彼女って
知らせる予定だった。
だけど
その話どころじゃ
ないね・・・
私は
無気味な
薄ら笑いを
浮かべていたんじゃないかな。
ユチョンが
誰かが持って来た
高そうなカメラを
持ち出して
みんなを撮り始めた。
ハイテンションぶりに
BBQがそうさせているんだと
思っていたのは
私とジェジュン・・そして
ユチョンを除くみんなだと
思う。
上手く騙せていたと思うよ・・
場の雰囲気を
悪くしないため・・
だけど
私はユチョンが
わからない。
「ユチョン
彼女連れて
来なかったの?」
どこからか
聞こえたその質問に
ユチョンは
躊躇いもなく答える――
「え?いるじゃん。
ここに。」
私に向けて
シャッターを
一度押したあと
歩み寄って
肩に腕を回す。
”冗談”かと
疑う声に
私が否定しないから
本当なのだと
信じたみんなは
驚いたけど
祝福してくれている。
でも・・
わからない。
私は
ユチョンがわからない・・・
ここに来る前に
知ってしまったことに
戸惑っているのは
私だけ?
ユチョンは
さりげなく
私の髪を撫ぜたり
体に触れたりする・・
そのたび
ドキっと
するけど
複雑な心境は
誤魔化せない。
正直なところ
BBQなんて
ちっとも楽しめなかった。
気付かれないように
集団から
少し離れたところで
川岸に座って
一人―――
流れをぼんやり
眺めていた。
何を
考えているわけじゃない。
何も考えないように
するためにそうした。
「ここに居たの?」
少しため息が
混じっていた。
探してくれたのか
ちょっと疲れた顔で
怒ってるみたいだった。
「ジェジュン・・
ごめん・・・」
でも私が
申し訳ない声を出すと
すぐに
笑顔になる。
元気づけようと
してくれているのかな・・
優しいよね
ジェジュン・・
「ん?・・あ!見てっ
魚がいる!」
「え?どこ?」
「そこ。」
「どこ?」
「だから
そこそこ・・」
「え?どこ??
きゃっ!!」
魚の姿が
確認出来ないから
ジェジュンが指差す
先を一生懸命
見ていたら
ジェジュンが
わざと
背中を押した。
思わず
ジェジュンに
しがみついて
バランスを保つ。
「アッハハハハ・・」
「え?魚は・・うそ!?」
「アッハ~・・」
そんな笑顔されたら
私も笑うしかなかった。
沈む一方だった
気持ちが
少し浮上したのは
ジェジュンのおかげ。
「アッハ
ごめんごめん。
もう戻らない?
そろそろ
みんな心配しだすよ。
・・ユチョンも・・」
「・・ジェジュン・・」
「ん?」
「あの人って・・・」
朝ユチョンの
マンションで
遭ったあの人は誰?
ちゃんと言わなかったのに
ジェジュンは
質問の意図を
読み取ってくれた。
「うん・・
ユチョンの前の彼女。
もう別れてるよ。
ユチョンの彼女は
〇〇ちゃんでしょ?」
そうだけど・・
だったらどうして
あそこに居たの?・・
「なんか
理由があるんじゃないかな。
ユチョンは
優しい奴だから・・」
「理由って?」
ジェジュンを
責めても仕方がないのに・・
「〇〇ちゃん・・」
私の名前を
優しく呼ぶと
穏やかに微笑み
”大丈夫だよ”と
私の肩に手を乗せる。
その手の重みに
荒立っていた
心が少し
落ち着いた気がした。
だけど――
「ジェジュン!」
その手を離せ―――
ユチョンが
ジェジュンの手を
私の肩から
払い除ける。
「ユチョン!?」
びっくりしたのは
私もジェジュンも
同じだった。
ユチョンは
ピリピリしていた。
見ただけで
今のユチョンには
何を言っても
通じないってわかった。
言いたいことは
たくさんあるけど
今は大人しく
みんなのもとへ
戻ろうと思った。
でも
手を掃われた
ジェジュンは
そうじゃなかった。
「ユチョン!!」
「〇〇は俺の
彼女だ。」
けだるい声で言うと
私の手をとった。
ジェジュンが
その手を掃う。
力強く
握られていたわけでもない
ユチョンの手は
容易に解けた。
「・・・」
「何してるか
わかってる?
一緒に住んでるのか?」
「・・・」
「答えろよ。」
「〇〇には後で
話すよ・・」
ジェジュンは
納得しなかった。
「今話せよ。」
「お前には
関係ない・・」
ユチョンが
私の腕を
掴もうとして
振り払った
手が
ジェジュンの顔に
当たった。
あ・・・
フッと
怒りと呆れを
含んだ笑い――
ジェジュンが
次にユチョンを
見たとき
怒りは爆発して
ユチョンに手を出した。
え・・ちょっと待って・・
「ちょっと!止めて!!」
目の前で
起こる乱闘に
どうしていいかわからない・・
誰かよばなきゃ!!












