チャンミンと社長が

背中を押してくれたから

私は授賞式に居る。


気持ちは

固まっていた。


この会社で

夢を実現させようって・・


それが私にとって

一番の選択だと

思い込ませようと

していたのかも――



東方神起~妄想ラブストーリー~


「〇〇!

これから?」


「チャンミン・・

うん。来てくれたんだ?」


平日のお昼で

忙しいはずなのに

わざわざ来てくれた。


会社にある

小さなホールに

審査員と役員

それに数名の

社員が見に来ていた。


私の他に

特別賞と言って

優秀なデザインを

会社が買い取る賞を

受賞した人も来ていた。


「じゃああとで――」


私は舞台袖へ

別れて歩いて行く。


チャンミンと別れて

歩きだしたら

後ろで声がした。


嫌いな声――


「久しぶりだな。

キミの仕事

見せてもらったよ。

この前のあれ・・

コンペ優勝したにしては

平凡だったな。」


井上部長が

すれ違った

チャンミンに

厭味を言っていた。



東方神起~妄想ラブストーリー~


「そうですか?」


「クリエイターは

想像力がなくなって

小さくまとまりだしたら

終わりだ。

キミの作品には

感じるものがないな。」


っ!!!


チャンミンになんてこと!!!


すぐに抗議したくて

二人のもとに

歩いて行きたかったのに

授賞式の準備だと

担当者に召集されてしまった。


チャンミン・・・


あんな人の言うこと

気になんて

していないと思う。


だけど・・


クリエイターは

作品に誇りを持ってる。


それを貶されるのは

一番心が痛むこと・・


チャンミンが

部長の誘いを断って

コンペに出た時から

そうなの?


会うたびに

チャンミンを侮辱しているの?



ねぇチャンミン?

私バカかな?・・


許せないよ・・部長のこと――


審査員から

批評があって

井上部長は

私のことを得意げに

”元部下”だと紹介していた。


その言葉は

ほとんど耳に

入らなかった。



スピーチをすべく

壇上にあがった私は

チャンミンの姿を探した。


居た――


私をまっすぐに

見つめ

見守る瞳。


東方神起~妄想ラブストーリー~


”ごめんね”って

視線を送り返した。


そのあと

深呼吸をして

スピーチを始めた。


「このたびは

このような栄誉ある賞に

選ばれたことに

感激しております。」


この賞は

すごい賞・・


これで

またこの会社に

戻ることができる。


だけどね・・


「ですが

謹んでご辞退させて

頂きたく思います。」


会場がざわざわしていた。



東方神起~妄想ラブストーリー~


チャンミンも

”何?”って目で

驚いてみている。


やっぱりここでは

働けない・・


あの人がいる限り

犠牲者がたくさんでる。


「ある人が

言いました。

クリエイターは

小さくまとまったら

終わり・・

全くその通りだと

思います。

創造力がなくなったら

引退すべきです。」


今回の井上部長の

コネの件が露呈しても

受賞者は辞退したから

部長は何も知らないと

言ってお咎めなし。


誰も彼を

辞めさせられないの?


「私はここを退社するとき

多くの涙をのみました。

自信も失くしました。

同じ思いをする社員を

これ以上出してはいけないと

思います。

私が今回ここに立った意味は

賞を頂くためではなく

私にしか出来ないことを

するため・・そんな気がします。」


だから私が明らかにする。

部長のこと――



「私が退社した理由は

作品を盗まれたからです。」


会場のざわつきが

もっと大きくなった。


「創造力がなくなったら

終わりだとわかっているなら

引退の時が来ていること

おわかりだと思います。」



私は部長を見た。



「作品を返して

頂きたいとは思いません。

引退の餞別に差し上げます。

受賞辞退と

井上部長への

最後のご挨拶と

させて頂きます。」


私は舞台を降りた。


私の言葉は

届いただろうか・・


部長のこと

ちゃんと

伝わったかな・・


今まで公にされることが

なかった真実――


たくさんの人の耳に触れた。

役員も聞いている。


作品を盗むことは犯罪。


部長は退任に

追い込まれるはず・・・




それを信じて――