僕は〇〇の近くに居て
彼女がどれだけ
頑張って
どれだけ自信のあるものを
作り出したのか
一番良く知っている。
だから
選考結果が出るのが
待ち遠しかった。
結果は当然
彼女の一人勝ちだと
思っていたから。
どんな優秀な人材だって
〇〇には敵わない――
今回の〇〇の作品は
僕にそう思わせるほどの
出来だった。
連絡を大人しく待てずに
社内のイントラに
時間ができるたびに
アクセスしては
結果が出るのを待っていた。
そしてついに
結果が・・・
え?・・・
〇〇じゃない・・・
〇〇から
僕に連絡があったのは
結果が出てから
しばらく経ってからの
ことだった。
自分なりに
整理をして
電話をかけて来て
くれだんだ。
「ダメだった・・」
一言で
僕に伝えた。
「うん・・
大丈夫か?」
僕も今
どうしようもなく
落ち込んでいるんだから
当人の〇〇は
もっと落ち込んでいるに
決まっている。
それでも
大丈夫だと気を張る
〇〇が僕の心を
締め付ける。
今すぐ逢って
抱き締めたい。
大丈夫か?
僕もすぐに帰るから
〇〇も仕事が終わったら
すぐに帰るように言った。
変なプライドが
邪魔をして
帰って来ないような
気がしたから・・
案の定
”仕事が終わらないかも”なんて
ウソをつく。
僕も同じ業界の
人間なんだぞ?
仕事のパターンくらい
わかってるよ。
「終わらなくても
帰って来て――」
「・・・うん・・・」
納得していない返事。
きっと〇〇は
帰って来づらいだろう。
だから僕はメールを入れた。
”遅くなりそう”って・・・
家に帰ったら
リビングに〇〇の
姿がなかった。
〇〇の部屋の扉が
閉まっている・・
そこにいるの?
扉を開いた先に
小さくなった〇〇が居た。
帰って来てくれてありがと。
「僕のもある?」
一人で飲んで泣くなんて
僕は何なんだよ?
”プライドがあるから
泣けない”ってさ・・・
「僕の前でも必要?
・・バカだな・・」
僕は〇〇は抱き寄せた。
その途端に
堰を切って
泣き始めた〇〇・・・
僕の前では
いつもそうしていればいい・・
見栄もプライドも
要らないよ。
僕は〇〇のすべてを
愛してるから――
泣き止んだ〇〇が
照れ笑いして
僕から身を離した。
もう大丈夫だと
言うけど
僕は大丈夫じゃない。
僕は知ってる。
〇〇が今回の
企画に今までにない
自信を持っていたこと。
「〇〇・・
自信あったんだろ?」
「え・・」
「あったよな?」
「自意識過剰だったんだよ。」
謙遜するけど
そんなわけない・・
「いや・・
僕も自信あった。
絶対〇〇が選ばれると
思ってた。」
「チャンミン・・」
ただの慰めだと
思ってるのか?
それは違う。
僕は〇〇の企画以上に
素晴らしいものが
どんなものだったのか
知りたくて
選ばれた企画を
見せてもらったんだ。
でもおかしいんだ・・・
〇〇の企画の方が
断然良い――
贔屓目なんかじゃない。
〇〇と比較しなくても
その作品が選ばれた
理由さえも
疑問に思うほど
平凡な作品だった。
・・何かある気がする・・
それが何なのか
探っても
良いだろうか?・・
僕の中に
生まれた疑惑――
〇〇はもう前を
向いているけど
僕は・・
この件に関して
まだ納得できそうにない。




