「お、忙しいところ
悪いな・・
今担当してる
案件は順調みたいだな?」
社長に呼ばれて
応接セットのソファーに座る。
「はい。
もうすぐ落ち着くと
思います。」
今抱えている案件・・
これが落ち着いた
タイミングで
公募の件を
社長に話そうと思っていた。
「ジュンスが来てから
少しは楽になった?
最近の〇〇さんは
前より
イキイキしてる気がするな。」
充実してるみたいで
良かったよ―――
って社長が笑う。
「はい。ジュンスの
おかげでとっても
助かってます!
私がやらなきゃいけない
ところまで気を配って
くれてて・・
助かります。
社長・・ありがとうございました。」
「ん?お礼なんていらないよ。
〇〇さんのおかげで
会社の体制見直すことも
出来たし、
上手く回るようになったからね。
こっちこそ良かったよ。」
でも恋人は
怒ってない?――
そう聞かれた。
「あ・・大丈夫です。」
「理解のある彼で
良かったよ。
〇〇さんには
ここに居てもらいたいからな。」
え・・・
「うちの会社には
実力のある人材が揃ってるけど
実績がまだまだだろ?
だから〇〇さんが
居てくれてホントに
助かってるんだ。」
「あ・・・ありがとう
ございます・・」
「で・・相談なんだけど――」
社長が机の上に
並べた資料――
一つ手に取って
私に差出ながら言った。
「このクライアント
任せてもいいかな?」
・・・社長の手から
資料を受け取って
パラパラめくってみる。
これ・・・
この前逃した
仕事と同等くらいの
利益が期待できる仕事――
「社長これは
社長が担当されるならって
話しでジュンスが取って来た
案件ですよね?」
「そう。でも俺じゃないと
ダメだと思われてるのも
悔しいだろ?
この会社は俺だけで
成り立ってるんじゃないのに。」
社長・・
経営者として利益だけを
追わない社長の
そうゆうところ
素敵です。
「でも私は――」
「〇〇さんなら
安心して任せられるよ。
相手も納得させられると思うんだ。」
私は今
大きなことをしようとしている。
それは職場での仕事とは
関係ないこと。
この職場を離れるかも
しれないことに
時間を費やしている・・・
職場でも大きな
案件を抱えてしまったら
私は身動きが取れなくなる
気がする。
どうしよう・・
公募のこと
今話すべきなのかも。
「社長・・・実は・・」
「社長!
△△さんからお電話です。」
途中で社長に
呼び出しが
入って遮られた。
「あ!そうだ・・
携帯机の上に
置きっぱなしだった。
もうこんな時間か――
打ち合わせなんだ。」
「あの・・社長っ!!」
「ん?頼めるよね?
〇〇さんなら
絶対大丈夫だから。
急なんだけど
クライアントに
企画見せながら
話しをしたいから
来週までに簡単な
資料出して置いてくれるかな。」
よろしく―――
颯爽と
ソファーを離れ
オフィス内に戻って行く
社長の姿は
男らしくてかっこいい・・・
見惚れている場合じゃなかった!!
どうしよう・・
これって
引き受けたことに
なってるんだよね?
来週までに
企画案?
公募の件だって
あるのに・・・
どうして
こうなっちゃうのかな・・
「なーにしてるんですか?
さぼりですか??ウキャっ」
ソファーの背に
体を預けて
悩んでいた私の前に
ジュンスが座った。
「ジュンス!お帰り。
さぼりじゃないよ・・
考え事。」
「考え事ですか?
企画について?」
「うぅん・・そうなような
そうじゃないような・・」
社長に任された仕事――
やるかやらないか・・
悩んでいる中に
どんな企画にしたらいい?
なんて同時に考えていたりして・・
「ウハッハ
何ですかそれ?
しっかりしてくださいよ?
また仕事取って来たんですから。
あ・・でも〇〇さんには
回せないのかな?」
「え?」
「社長から聞いてませんか?
任せたい仕事があるって・・」
「・・さっき聞いた・・」
「ん?何で浮かない顔してるんですか?
凄いじゃないですか?
社長、○○さんのこと
信頼してますよ!」
ジュンスは明るい笑顔で
言ってくれる。
私はため息しかでない。
「ウハハ
なんですか~!?」
そうだ・・
ジュンスは前の会社のこと
知ってるよね?
働いていたんだから・・
この張り裂けそうな
思い
どこかに吐露したくて
ジュンスに話した。
「ジュンス・・前の会社のとき
一般公募ってあったでしょ?」
「あーはい。ありましたね!」
「それにね・・・
応募しようと思ってて
今、企画を思案中なの・・
仕事以外の時間は
ほとんど全部つぎ込んで
本気で取り組んでて・・」
「そうなんですか!?
戻るんですか?」
「それはまだ・・
ただ挑戦したくて。」
「ウッハハハハ
チャンミンも本当に
心配性だな・・」
「え?」
チャンミンって言った?
「チャンミンが
戻って欲しいって
言ったんじゃないんですか?」
「え・・あぁ・・公募を
教えてくれたのは
そうだけど・・・
ねぇジュンス?
私とチャンミンのこと・・・」
知ってるの?
「え!?知ってますよ!!
僕たち親友ですよ!?
えぇぇ!?チャンミン
言ってませんでしたか!?」
親友?
「うぅん・・”同期だった”って
それだけだったから
名前知ってる程度なんだと
思ってた。」
「ウッハハハハハハハハ
酷い~!!!
チャンミンっ!!
この会社紹介してくれたのも
チャンミンなのに・・
〇〇さんを僕に
託したくせに!!ウッハハハ・・」
笑っているのは
チャンミンのあの性格を
よく理解しているからだよね?
本当に親友なんだ!?
びっくり・・
しかも会社紹介したって?
「チャンミンが
この会社を?」
「そうです。
どこかいい会社ないかって
聞いたら紹介してくれたんです。
あ、でも僕の意思で
決めましたよ。」
そうだったんだ・・
チャンミン・・
急に愛おしくなって
逢いたくなった。
「一人で悩まなくても
〇〇さんには
良い相談相手が
いるじゃないですか?
相談してみたら
どうですか?」
きっとチャンミンなら
良いアドバイスをくれますよ――
ジュンス~!!
「そうだね♪」
「ウッハハハ
顔・・ニヤけて
ますけど大丈夫ですか?
ハハハ」
あ・・恥ずかしい・・
「僕が必死で
取って来た仕事
ちゃんとやってくださいよ~!!」
「わかってるわかってる!
ちゃんとやってるよ!?
いつも――」
「アハハ
そうですね。」
それから――
「僕がチャンミンに
紹介されたって知っちゃったこと
チャンミンには内緒ですよ!?
僕・・・命が・・・」
「アッハハハハ
大丈夫大丈夫!
大事な営業マンの
命・・守らなきゃね。アハハ」
ジュンスが
オフィスに戻って行った。
私も仕事に
戻らなきゃ。
悩んでいた気持ちは
ウソみたいに
晴れていた。
ジュンスのおかげ?
・・チャンミンのおかげ――
一人で悩まなくても
もういいんだ。
さ、仕事に戻って
ジュンスがとって来てくれた
案件・・
頑張らなきゃ――








