それから間もなくして
数名の営業さんが
入って来た。
社長は有言実行――
入って来た
営業さんに優先的に
女性クリエイターが
持っていた営業の仕事を
回させた。
私の分は
新しく入ってきた
ジュンスが引き受けてくれた。
これで
クリエイター業だけに
専念できる。
「〇〇さん!
例の案件取れましたよ!!
お願いしますね――」
いつも明るい彼は
新規の仕事も
たくさん取ってくる。
入って来た営業さんの
中でも一番
有能な営業マンだと思う。
前の会社で働いていた時の
後輩だって・・・
1課の営業部だから
私は会ったことがなかった。
1課はチャンミンが
属している課――
チャンミンのことは
知っているのかな?
チャンミンと私の関係を
公表するみたいだから
特別彼にそのことを
聞いたことはなかった。
でもチャンミンに
聞いたら
”同期だった”って・・・
チャンミンの年は
優秀な子が
多かったんだね?
凄いな――
ジュンスが営業を
引きうけてくれた
おかげで
仕事が充実する。
毎日
何の不満もなく過ぎている。
今日は会社帰りに
チャンミンとデート――
平日の夜の
デートって特に
テンションが上がる。
家に居たって
チャンミンと居たら
自然とテンションは
上がっているけど
会社帰りはスーツだから♪
スーツのチャンミン・・
いつもより
更にかっこ良さ2割増し!
元がかっこいいから
これ以上ないくらい
かっこいいの!!!(///∇//)
ご飯を食べて
他愛のない話をして
絡ませるように
手を繋いで
夜道を歩く。
今の私は満たされてると
思っている。
こんなに素敵な彼がいて
仕事にも慣れて
幸せな時間を過ごしている。
だけど・・・
通りすがりに
見つけた
ある化粧品会社の
公告パネル―――
食事の時に
飲んだワインに
酔っていたせいか
私は歩み寄って
その前で足を止めた。
懐かしい感じ・・・
お酒で感傷的に
なっていたのかな?
「ん?どうかした?」
チャンミンが
隣に来て並んだ。
「ん?・・うん。
これ・・ウチの会社の
仕事だよね。」
もう”ウチの会社”じゃ
ないか・・
前の会社・・・
「うん。
ずっと専属だからな。」
そう・・・
何年も前から
この化粧品会社の
公告は専属契約が
守られていた。
私がクリエイターの
仕事をやりたいと
思ったきっかけは
この化粧品会社の
当時の広告だった。
人目を惹きつける
華やかさに
キャッチコピー・・・
凄いなって思った。
私もこんな広告を
作った会社で働きたいと
思って
専属契約を結んでいる
前の会社に入社した。
でも入社してすぐに
専属を保っている
会社にとって大事な
案件だから
担当するのは
特別な部署だと言うことを
知った。
キャリアを積んで
やっと希望が出せる部署――
その時から
私はそれを目標に
ずっと頑張って来た。
私が描いた道・・・
叶えられなかったな――
「やりたかったの?
この仕事――」
「え?・・あぁ・・うん・・
目標にしてたから。」
ぼーっとしていた。
「諦めた?」
諦めるも何も
前の会社を辞めて
しまった私には
どう頑張っても
この仕事はもう出来ない。
「当たり前だよ・・
もう出来ないもん。」
「出来るよ。」
「え?・・」
何?・・
出来るわけないよ・・ね?・・
「これ――」
チャンミンが
渡してくれた紙・・
「一般公募・・・」
「応募して
戻って来たら?」
「・・・」
一般公募で
通ったら社員として
採用される。
でも私は
辞めたんだよ?
戻れるわけないよ。
「辞めた理由は
みんな知ってるよ。」
「え?・・」
「他にも被害者は
いたみたい。
〇〇の気持ちは
みんなわかってるから・・
戻りたいんだろ?」
・・・戻りたい?・・
現状に満足してる。
でもそう思いたいだけ
だったのかな・・
チャンスがあるなら・・
なんて今
気持ちが動いたのは
確かだよ。
だけど
今の会社は?
入ったばかりで
辞めるなんて
責任感なさすぎだよ・・・
でも
戻れるものなら・・
私の中で
葛藤があった。
すぐに決められない。
「ありがと・・
考えてみる・・」
どうしたいの?・・私は――




