予定通り
打ち合わせを
始めた。
クライアント
二人対私――
決定権のある
部長クラスの方と
ここまで話を詰めてきた
その方の部下。
今日は打ち合わせと
言っても大詰めまで
来ていたので
部長がOKを出して
契約するだけのはずだった。
2,30分
雑談を交えながら
打ち合わせをして
決まるはずなのに
答えを渋っているように
見える。
1時間が過ぎようと
するのに
結論に持って行こうとすると
”ここは?”と
質問がくる。
違和感は感じていた。
途中
部下の方に電話が
かかってきて
席を外すと
その違和感が何なのか
わかった気がする。
書類に手が伸びてきたと
思ったら
執拗に私の手に触れる・・
「あ・・」
私が手を引いたら
あたかも偶然触れて
しまったかのような
反応をする。
でも明らかに
おかしかったよね?
その後
もう少し
話しを詰めていかないと
契約は出来ないから
部屋で話そうと言われて
確信に変わった。
ここで打ち合わせ
しましょうと言っても
部屋に資料があるからと
強引に連れて行かれそう・・・
部下は電話に出たまま
帰って来ない・・・
「何か誤解してる?」
呆れ顔で
言われると
女ってどうしていいか
わからない。
自意識過剰・・なの?
この大きな仕事を
自意識過剰で
逃すなんて
あり得ないと思った。
部下もきっとすぐに
戻ってくるよね?
・・でも心配・・
だから社長に
電話をかけておこうと
思った。
携帯電話を
取り出して
社長の番号を呼び出す。
「社長もご挨拶をと
申しておりましたので
場所の変更の
連絡だけさせて頂きます。」
いきなり電話をするのは
失礼だからと
一言断りを入れたら
今日中に契約まで
行くかわからない段階で
社長が来る必要はないと言う。
今日契約まで行かない?・・
話しは大詰めだった
はずなのに・・
腑に落ちないこと
ばかり。
これって
自信過剰なの?・・
私の思い過ごし?
この契約は逃せなくて
でもこの状況は
理解できなくて・・・・
部屋は目前・・
社長に電話は出来ないから
メールだけ打った。
部屋番号は
部屋に着くまでわからないから
場所の変更を
知らせるメール。
部下の方が不在のままだと
いうこともそれとなく
メールに書いて
社長に気づいてもらえることを
祈った。
エレベーターを
降りて廊下を歩いて行く間
携帯を手に握りしめて
いたけど
社長からの返信が来ない。
どうしよう・・・
このまま部屋に入ったら
絶対にヤバいよね!?
・・でも本当に
思いすごしだったら・・・・
どうしたらいいの・・・?
悩んだ末
私が取った選択は
部屋の前で部下の人か
社長が
来るのを待つこと。
せめて二人きりに
ならなければ
大丈夫・・だよね?
緊急の連絡が
入ったからと言って
折り返しの電話を
掛けてから部屋に
入ると告げ
部長に先に部屋に
入っていてもらうことにした。
部長が部屋に入ってから
何度も何度も社長の
携帯を鳴らしたけど
打ち合わせ中で
出られないのか
虚しいコール音だけが
耳に残る・・・
部下の人にも
連絡をしてみたけど
通話中・・
まだ話が終わらないの?・・
どうしよう・・
どうしよう・・
焦るばかりで
対処法が見当たらない。
本当に何でもなかったら
失礼だし
仕事まで逃すことになる。
ここは覚悟を決めて
入室すべきなの?
何の解決策も
思い浮かばないまま
部屋のドアが
開けられた。
タイミング悪く
ちょうど繫がらなくて
電話を切ったところだった。
「もう終わったかな?」
「いえ・・すみません。
トラブルが起きてしまいまして。
もう一件だけ・・」
「中でかければ
いいじゃないか?」
仕事の内容が
他社に漏れては行けないからと
断っているのに
もう通用しそうもない。
「ウチとの打ち合わせ
時間だろ?
早くはなしを進めよう。」
本当に打ち合わせなの?
じゃあどうして
私の腕・・
そんなに引っ張ってるんですか?
怖い・・・
早く来て
社長!!!!
もう誰でもいいっ!!
誰か来てーーーーー!!!!!



