チャンミンに言われたせいか
このまま無職でいるわけには
行かないと奮起して
仕事を探すことにした。
前職は大手広告代理店での
クリエイター。
私は器用なタイプではないから
スマートに仕事が出来ない。
でも人一倍努力して
通る企画を出していた。
それはクリエイターの
仕事が好きだから。
だからまた
クリエイターとして
働ける場所を探すことにした。
「就職活動は
順調?」
ジェジュンが
夕食を食べに来た。
食べに来たって言っても
私は料理が苦手だから
ジェジュンが3人分
作るんだけど・・・
「うん・・今度
企画案作って見せて
欲しいって。」
「そうなんだ。」
料理は出来ないけど
ジェジュンに任せきりに
するのも気が引けるから
簡単な作業だけ手伝う。
キッチンに二人並んで
会話をしながら
夕食の準備―――
ジェジュンは
人より
パーソナルスペースが
狭いみたいで
近づきすぎる
距離に戸惑ってしまうことがある。
今日もそう―――
味見をして欲しいと
言われて
一口口に運んだ途端に・・
「どうかな?
美味しい??」
ってどんどん
近づいてくる。
この距離・・
ジェジュンにされたら
女性は勘違いしちゃうよ?
「・・うん(//・_・//)
美味しい・・」
ちょっとドキドキしながら
答える。
「あ~良かった~。
ちょっと醤油入れ過ぎた
気がしたんだよね。」
笑い合ったら
背中でドンっと
大きな音がした。
チャンミン!!
帰って来てたんだ。
「ジェジュンさんの
ところに住ませて
もらったらいいんじゃ
ないですか?」
え!?
何の話し?
「チャンミン?
どうしたんだよ?
お腹空いてんの?」
お腹空くと
機嫌悪いんだよなって
笑ってるジェジュン。
でもチャンミンは
笑ってない。
どうしたんだろうと
思いながら
野菜を切るために
包丁を握ったら
手元が狂って
指を切った。
「痛っ!」
「え!?切ったの!?
大丈夫!?」
隣に居たジェジュンが
駆け寄って来て
傷口を口に含んだ。
え・・・・(//・_・//)
「大丈夫?」
「・・・・う・・ん・・」
「絆創膏貼った方が
いいかも。
チャンミン!
絆創膏どこ?」
絆創膏を
持ってきてくれた
チャンミンは
凄い呆れ顔―――
「手、出してください。」
「いいよ。
自分で貼れる。」
そう言ったら
グイッと手を
引っ張られて
傷口を見つけると
消毒液を
じゃばじゃばかける。
「痛いよ!!かけ過ぎだよ!!!」
傷口に消毒液が
滲みて痛くて
手を引こうとしても
チャンミンが放してくれない。
「良く消毒しないと。」
なんか
わざと痛くしてる
気がするのは
きのせい?
そして絆創膏を
貼りながら
一言―――
「料理も出来ないんですか?」
!!!
出来ないよ!!!
だから何!?って
言いそうになったけど
これじゃあまた
ないものリストに追加されちゃう・・・
部屋もない―――
仕事もない―――
料理も出来ない――
ダメダメダメ!!!
もっとバカにされちゃう・・・
「で・・出来るよ!!
何でも作れるよ。」
フッて鼻で笑われた。
見透かされた感じがして
余計なひと言を言ってしまった。
「何がいいの?
作ってあげる!」
しまった・・
「得意料理は?」
ない・・・
「た・・卵料理!!」
嘘ばっかり・・
「じゃあオムレツでも
作ってみてください。」
オムレツ!?
やばい・・
「簡単じゃん・・
そんなのでいいの?」
”いいです”って言われたから
オムレツを作るしかない・・・
手伝いの様子で
私の出来なさ具合を
知っているジェジュン――
”大丈夫”って目で
見てるけど
後ろから
監視されているから
助けは求められない。
”うん”と頷いて
冷蔵庫から卵を3個出してきた。
たぶん3個くらいあれば
大丈夫でしょ・・・
卵を割って
塩?こしょう??お砂糖とか
要るの?
お料理なんて
感覚だよね・・・
何とかなる!!!
適当に混ぜて
フライパンに流し込んだ。
テレビで見たことがある。
オムレツは
フライパンを
トントン叩いて
丸めるって・・・
叩いてみたけど
全然まとまらない。
どうして!!?
仕方なく
お箸で丸くまとめようと
思ったら・・・・・
念のために聞きます―――
「これは?・・・」
「え?・・
スクランブルエッグ風オムレツ・・」
我ながら
ピッタリなネーミング!
「・・・」
お箸でまとめようとしたら
ぐちゃぐちゃになって
一部スクランブルエッグ
状態・・・
それをなんとか
まとめて形にした。
「知らないの?
スクランブルエッグと
オムレツが一緒に楽しめる
って言う・・今流行りなんだよ?」
「流行ってないです。」
はい・・・
「味は?
美味しいでしょ?」
一口食べて
首をかしげたチャンミン――
何!?
「未知の味です。」
「未知!?」
食べてみたら
本当に食べたことのない
味がした。
ジェジュンも
食べて苦笑い。
”何が足りないんだろう”って
ジェジュンは真剣に
考えてくれた。
チャンミンは厭味ばっかり・・
「これで良く
作るって言いましたね・・
ある意味才能?
どうやったら
この味でるのか・・」
もっ!!!!
「そんなに言うなら
作ってみてよ!!!
オムレツ、奥が
深いんだからっっ!!!」
「いいですよ――
これよりは
絶対上手くできます。」
自信満々に
キッチンに向かったチャンミン。
卵3個は一緒・・
あれ・・何か手際がいい・・
見る見るうちに
出来上がった
オムレツは
本来のオムレツの
綺麗な形をしていて
美味しそうな
匂いまで漂わせている。
食べなくても
負けはわかった。
でも一応食べてみる。
やっぱり感じた
敗北感・・・・
「美味しい・・・」
「うん・・〇〇さんの
よりは確実に。」
自分で作った
オムレツを食べて
澄ました顔で言われた。
「料理・・得意なの?」
「いえ。初めて作りました。
でも才能があるみたいです。」
あなたより―――
くぅぅぅぅ!!!!!
本当に厭味なんだからっ!!!!!
でもね・・
憎み切れないのは
なぜだろう・・・・・
チャンミンが去った後
座って居た席の前――
並んだお皿の料理は
いつもみたいに
綺麗に平げられていた。
すべて・・・・
そう・・
あれだけ
文句を言っていた
私のオムレツでさえも・・・
残さず食べてくれていた――
そして
去り際の
「ごちそうさま――」
目も合わせない
”ごちそうさま”だけど
”ご馳走なんて食べてない”って
言いそうなチャンミンが言う
”ごちそうさま”は
何故だか特別に感じて
胸の奥がキュンとした。










