東方神起~妄想ラブストーリー~


ジュンスは病院に直行して

それからしばらく

会社を休んだ。


社長の容態が

思わしくないみたい・・・



誰も知らなかった――


ジュンスが社長の

息子だってこと・・


課はその話で

持ちきりだった。


みんな

もっと仲良くして

おけば良かったとか

媚を売っておけば

よかったなんて

勝手なことばかり言っている。


それが嫌で

黙っていたんじゃないの?


それよりジュンス・・


大丈夫かな?


帰りの車の中も

病状を心配して

無口になったジュンスに

声がかけられなかった。


電話にも出ないし・・・・


帰りに

病院に寄ってみることにした。


病院に来てみたけど

一介の社員の私が

病室に入れるわけもなく

病室の前で

ウロウロするしか

なかった。


ジュンスは

どうしたって

手の届かない

ところの人だったんだな――

なんて思ったりして・・


東方神起~妄想ラブストーリー~


「ん?・・〇〇さん?」


「あ!ジュンス!」


粘って居て

良かった。


ジュンスが病室から

出て来て逢うことが出来た。


疲れ切った様子の

ジュンス―――


「ジュンス・・

大丈夫?

ご飯食べてる?

ちゃんと眠れてる?」


やつれて

目の下に

クマを作った

ジュンスを見たら

そんな言葉しか

出て来なかった。

東方神起~妄想ラブストーリー~


「はい・・大丈夫です。」


病室の前の

ソファーに座って

少し話しをした。


「ジュンスの生い立ち

全然知らなくて

びっくりしちゃった・・・」


「ハハ。

言ったらみんな

僕のこと避けますよ。

言わない方が

仕事もやりやすいと思って・・」


笑っているのは

声だけで

顔は全然笑っていない。


「ジュンス・・

無理しなくていいよ。」


「・・・」


「社長の御容態は?」

「意識が戻りません。

戻っても障害が

残るかもって・・」


「そう・・・

でもジュンスは

ちゃんとご飯も食べて

寝ないと・・

持たないよ?」


「はい・・・

このままだったら

僕が会社を引っ張って

行かないと

行けませんからね・・・」


ジュンス・・・


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俯いてしまった

ジュンスの手を

横からそっと握った。



会社を継ぐプレッシャーは

測りしれないほど

大きいのだと思う。



こんなとき

気の利いた言葉が

出て来ない自分が

もどかしい。


でもジュンスは

私の手をギュッと

握り返した。


「ジュンス・・・

大丈夫だよ・・きっと・・」


”うん”と頷いて

頭を垂れたままだった

ジュンスが

少ししたら

私に寄りかかるようにして

眠っていた。


疲れたよね・・・


握り返された手に

汗が滲んで来ても

放そうとしてくれない。


眠っているのに

手の力は

抜けなくて・・


「そばにいるから

大丈夫だよ?・・」


起こさないように

囁いてみた。



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こんな風にずっと

ジュンスのそばで

支えられたらいいのにな・・・


年の差だけじゃない。


育った環境だって

違い過ぎるから

これは叶わぬ想い―――


だけど

出張先での出来事と

手を放してくれない今のジュンス・・


私のこと・・どう思ってる?


夢を見る余裕はない。


だけど

ジュンスのことが

好きだから・・


望みをかけて

みようか?・・


「・・ぅぅん・・」



目覚めたジュンス――



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「ウッハハ

僕寝ちゃってましたね。

何かスッキリしました。」


照れ笑いする

ジュンスは

本当に少しだけ

スッキリした顔に

なっていた。


「〇〇さんが

来てくれたおかげかな・・

久しぶりに安心して

眠れましたよ。ハハっ」


ジュンス・・・


もしそれが

本当なら・・


本気で言ってくれて

いるのなら――


「これからも・・」


そばにいていい?―――


良いわけないってこと

だったのかな・・


私の意を決した

告白は最後まで

言い終わる前に

遮られた。


「あ!ジュンス!!」


コツコツと

ヒールの音を

響かせながら

走ってきたのは

横井さんだった。


「心配で毎日

来てたんだよ?

でも入れてもらえなくて・・」


どうしたの?

その猫撫で声は・・・


東方神起~妄想ラブストーリー~



「そうなんだ。

ありがとう・・

大丈夫だから

心配しないで。」


無理して笑ってみせる

姿が痛々しい・・・


横井さんの前だから

強がってるの?


そんな発想、

ひねくれているのかな・・


「じゃあ

僕もう戻るよ。

せっかく来てくれたのに

ごめん。

〇〇さんも・・ありがとう

ございました。」

「あ・・うん・・

無理しないでね!」


横井さんが

現れて

言いたいことが

言えないままに

なってしまった。


私の気持ち――


最後まで

伝えていたら

ジュンスは

何て答えたかな?