帰りの車は
私が運転した。
遅くなったから
直帰することにした。
「〇〇さん
この後予定
ありますか?」
助手席のジュンスに
聞かれた。
「うぅん
帰るだけだよ。
だからジュンスの家
経由で送るよ。」
「じゃあその前に
食事に行きませんか?」
「え?うん・・
いいけど・・」
ジュンスに言われた
通り運転して
ついたお店は
素敵なお店だった。
ジュンスは常連なのか
顔を見ただけで
お店の人が
奥の個室に通してくれた。
「よく来るの?」
「たまにです。」
そう答えたけど
本当に?
たまにしか
来ないのに
こんな個室に
通されるかな・・
食事を始めたら
ジュンスが私に聞く――
「〇〇さんって
恋人は?」
思わず食べているものを
吹き出しそうになった。
急に何を言い出すの?
「・・いない・・よ?・」
「そうなんですか?」
「居たら
ここでジュンスと
食事はしてないと思う。」
「どうしてですか?」
「どうしてって
恋人がいるのに
男の人と食事は
しないでしょ?」
「〇〇さんには
僕が男に見えますか?」
真面目な顔で
聞かれた。
「?どうゆう意味?」
「職場の同僚じゃなくて
男として見れますか?」
「あぁ~そうゆう意味・・
って!?え?・・」
一人違う意味に
捕えて驚く私に
ジュンスは気づきも
しないで続ける。
「どうしたら
一人の男として
見てもらえるんでしょうか?」
「・・・」
「僕・・何かしたんですかね?」
横井さんのこと?
私に相談してるんだ・・・
あ!!
「ひょっとして
ここって横井さんと
来るつもりだった?」
私に気を遣ったのか
返事はしなかったけど
表情を見ただけで
そうだとわかった。
何度断られても
めげないと思っていたけど
ジュンスも
折れそうになっていたんだね・・
でもジュンスは
悪くないと思う。
「うーん・・
どうしたら
いいんだろうね。」
今まで成功した人を
見たことがないから
私にもわからない。
「押してダメなら
退いてみるとか?・・」
ありきたりだけど
恋愛の駆け引きでは
重要なことのような
気がする。
「好きなのに
退くんですか?」
別にジュンスの
ことが好きなわけでも
気になっているわけでも
なかったけど
こうもはっきりと
自分の前で
他の女性のことを
”好き”と言われると
複雑な気持ちになる。
「恋愛には
それも必要なんじゃない?」
「僕は気持ちを
真っ直ぐにぶつけたいです。」
ぶつけても上手く
行かないから
私に相談したんじゃないの?
でもその
真っ直ぐさ・・
私は良いと思うよ。
相手が悪いよね・・・
彼女のどこが
好きなんだろう?
見た目だけじゃ
ないのかな?・・
ろくなアドバイスも
できないうちに
食事が終わってお店を
出た。
「あれ?・・
何か聞こえませんか?」
車に乗ろうとしたら
ジュンスが言った。
何?・・
耳を澄ませると
猫の鳴き声が聞こえる。
車の下?・・
覗いてみたら
子猫が居た。
「おいで・・」
このまま車を
動かすのは危ないから
車の下に
手を伸ばして
猫を外に出した。
「あ・・足・・」
「怪我してますね・・」
捨てられちゃったの?
綺麗な猫なのに
首輪をしていないから
きっと野良猫だと思う。
でも見つけちゃったから
放って置けないと
思ったのは
ジュンスも同じだったみたい。
私たちは
猫を車に乗せて
獣医さんに連れて行くことにした。



