正面から
戦って勝てないと思うと
人は陰でその人を
貶めようとする。
仕事が出来ないことは
棚に上げて
部長の悪口を
言う社員がいる。
うちの会社は
金曜日は
カジュアルデーに
なっていて
いつもはスーツの
男性社員も
金曜日だけは
カジュアルな服装で
出勤することが
許されている。
部長もいつもの
スーツ姿ではなく
この時ばかりは
私服で出勤している。
その部長の
ファッションセンスが
悪いと陰口をたたくのを
耳にした。
部長が通り過ぎると
クスクス笑ったり・・
同じ課の人間として
恥ずかしくなるくらい
幼稚な仕打ちだと思う。
当の部長は
全く気付いていないから
よかったけど・・
部長ってもしかして
鈍感?
本人が気づいていないから
良いのかななんて
思うけど
でもやっぱり許せない。
かと言って
私も真正面から
戦うほど肝は座って居ない。
だから――
「部長!
明日お時間ありますか?」
「明日?明日って
土曜日だよな?
なんで?」
「私に付き合ってください。」
彼氏の誕生日に
服をプレゼントしたいから
選ぶのを
付き合って欲しいと
部長を誘った。
私は強引に
部長と休日に
会う約束をした。
約束の土曜日――
少し早目に着いたと
思ったら
部長がもう待っていた。
「すみません!
お待たせして
しまいましたか?」
「いや。全然。
まだ時間前だろ?」
優しい笑顔で
応えてくれる。
部長は良い人――
部長のこと
何もしらないくせに
陰口たたくなんて
最低!!
もう部長のこと
笑わせないから!
「さっ!部長
行きましょう。」
私は部長を引っ張って
連れて行く。
私もセンスがある方
じゃないから
とりあえず
ユチョンが良く行く
お店なら
間違いないだろうと
思って来た。
店員さんを捕まえて
部長の
全身コーディネートを
お願いした。
店員さんに
言われるままに
試着する部長――
背が高くて
顔が小さくて
足が長くて・・
モデル体型の
部長が試着室から
出てくるたびに
ため息が漏れるほど
かっこよかった。
もうこれで
大丈夫。
絶対に笑われない!
私のポケットマネーでは
すべては買えないから
試着した中で
一番部長に
似合っていたものを
プレゼントした。
「〇〇?
どうしてこんな?」
部長は訳が分からないと
驚いている。
「お礼です。
お休みの日なのに
こんな私的な用事に
付き合って頂いたので
これくらいは・・
受け取ってください。」
部長は全然
受け取ってくれなかったけど
私の気持ちが治まらないからと
強くでたら受け取ってくれた。
でも代わりに
食事をおごらせて
欲しいと言われて
二人で夕食を
食べることになった。
ユチョンは
友達と飲みに行くと
言っていたから
部長の誘いを受けた。
「美味しい!」
部長が連れてきて
くれたお店は
おしゃれで高そうな
お店だった。
料理もすごく
美味しい。
「だろ?この店
美味いんだよ。」
キラキラして
部長が応える。
「部長は良く
このお店に?」
「来たいんだけど
一人じゃ来にくいから
最近は来てない。」
あの彼女と
通っていたお店なんだ・・
少し嫌な気分になって
黙った。
「〇〇は彼氏とは
長いの?」
「え?・・あ・・5年目です。」
「5年?長いな。」
「何となく過ぎてました・・」
”何となく”――
最初はそんなこと
なかったのにな。
二人でいることが
特別に感じていた頃は
何をするのも
二人だった。
ご飯を作る時も
片づけをするときも
テレビを見るのだって・・
掃除、洗濯、買い物
全部ユチョンと二人で
していた。
いつからだろう
お互いがいることが
当たり前になって
一緒にいるのに
それぞれの時間を
過ごすことが多くなったのは・・
私たち
一緒に居る意味
あるのかな?・・・
何か落ち込んできた――






