アニメ第4期では、春高の両校の初戦までだったので、まさに待望の「ゴミ捨て場の決戦」。猫又監督が言う「少しばかりこの試合を待ち望んでる奴らが多いだけさ」には、私たちも含まれる(…と思いたい)。


描かれているのは、まさに「ゴミ捨て場の決戦」そのものだけれど、そうなるまでの背景や、そのセリフが出るまでの経緯などもさり気なく挿入されているので、アニメの2期までを知っていれば楽しめるだろうなと思う。


逆に言うと、アニメに限らず、原作でこのストーリーを知っている私でも、新しい視点で描かれたもう一つの作品として楽しめた。


原作は登場人物のモノローグがたくさん入るから、色々と情報が多いが、今回は原作とは少し違う視点から描かれている場面が多くて、こうなってたんか〜!と思うことも多かった。

日向と研磨の出会いも、原作やアニメでは描かれなかった部分が入ることで、研磨のいい意味での大雑把さや、黒尾の臆病さというか研磨に対する後ろめたさのような感情も伝わる。


2期の作画が個人的には1番好きだったんだけれど、今回はそれに近い印象。試合後半になるにつれて、オーバーすぎるほどの腕のしなりや体の歪みが、かえってスピード感やボールの威力を伝えてくる。ラストの目まぐるしくボールが行き来するところの演出がとにかく秀逸!あそこでまさか研磨視点でいくとは…。目まぐるしく自陣と相手コートを見渡し、判断しようとする研磨の思考を共有できる贅沢な時間。そしてまさにコートの中にいるような息遣い。声優たちの渾身の演技には脱帽するしかない。

これは映像でなければなかなか味わえない体験だった。

原作でグッときた場面が、声に感情が乗ることで、さらにさらに胸を打つシーンになっていると思う。黒尾の問いかけに笑顔で答える月島や、手に汗握る展開の中、思わず漏らした研磨の呟き、それを聞いた日向の雄叫びの明るさと、心底嬉しそうな黒尾の笑い声。

「もう一回」がなくて、粘りに粘る試合運びで、苦しくて仕方ないはずなのに、伝わってくるのは楽しくて仕方ないという感情。青葉城西戦や、白鳥沢戦のようなヒリヒリとした緊張感ではないのが「ゴミ捨て場の決戦」の1番の魅力なのだと思う。ライバルではなく、まさに好敵手。互いに刺激を受けながら成長してきた2チームの、最高の場での試合=ご褒美タイムなんだろう。試合が進むにつれて、苦しいのに笑顔が多いことにも納得。


観終わって今更ながら、日向の「研摩に勝つ」と黒尾の「チビちゃんはお前に勝つ気でくるだろうな」が、試合そのものの勝敗ではなく「研磨が試合を楽しめるか」だったことに気付かされてグッときた。

終盤の音駒の3年生のやり取りも、仲のいい彼ららしくてよかったし、主題歌も随所に「ハイキュー」らしさが散りばめられていて、心にくい。


公開初日、最終の上映にも関わらず館内はほぼ満席で、アニメ終了から4年経っても人気のコンテンツであることがわかった。

とりあえず家帰ってもう一回原作読んで、試合観戦しに行かなきゃ!という気分。

映画を観に行くというより、本当に試合観戦、ラストはコートに立たないといけないので笑、ドリンクはスポドリがいい気がする。


3回目視聴というか、観戦?で、ラストの研磨がボールをレシーブした後、コートにぽたぽた汗を落としながら次のプレーを考えてるシーン、汗に研磨が映り込んでることに気づいて、ちょっとゾクっとなった。すごいわ、production I.G


監督・脚本は、アニメシリーズの第1期から第3期までの監督を務めた満仲勧。

あっという間の85分。