舞台「刀剣乱舞」の最新作である「山姥切国広 単独行」の福岡公演。



山姥切一振りでの公演ということで、どんな舞台になるのやら…(ネタバレ含む)


オープニングは修行の旅に出た山姥切(荒牧慶彦)から主への手紙。この始まりも単独行ゆえか?

強くなりたい、自分とは何かを確かめるために修行に出て、一度は本丸に帰ろうとしていた山姥切。本丸に戻る前に会わねばならないと思ったのは、これまでの戦いの中で皆が口にした「織田信長」だった。信長とは何者か(これが虚伝の時の問いかけと重なってちょっとグッときた)を知るために、元服したばかりの信長に、家臣にしてくれと頼み込む。そこで若き信長に問われた「お前は何のために闘うのか」。「本能」と答えた山姥切を笑う信長に「知るのではなく思いを馳せろ」と言われ、山姥切は日本刀の歴史とともに人の思いに触れていく。


信長とともに須佐之男命(スサノオノミコト)、聖徳太子、三条宗近、北条政子…さまざまな時代をさまざまな人と刀の物語を体験していく。

印象の違う様々な信長たちとともに時代を遡る中で、信長が己の最期を知りながらも、その未来を変えようとは考えていないことに山姥切は衝撃を受ける。そしてだんだんと山姥切の中に一つの想いが宿っていく。


まずは、1人でどのように芝居を回すのか…と思っていたら、まさかの劇中劇。神様から人斬り、そして先日の夢語刀宴では入れ替わりの設定で三日月宗近をやってはいたけれど、衣装を纏っての本気の三日月宗近まで演じるとは!しかも、悲伝のラストシーンの再現…。殺陣も、仕草も見事な再現でもう泣くしかない。

荒牧慶彦がそれぞれの役柄を、声音を変え、芝居を変えて演じ分けたのはお見事。また、さまざまな逸話を持つ信長を、身長も、年齢も、性別もさまざまな役者に演じさせる大胆な演出もよかった。


煤けたマントに顔を隠して「こっちを見るな」というまんばちゃんが見られなくなったのは残念だし、マントを翻しながらの殺陣もまだまだ見たかったけど、三日月宗近を救いたいと思い詰めるのでなく、三日月宗近を信じると言い切ってきりりと前を見据えて進んでいく極・山姥切はかっこよかった。


今回で円環を巡っているのが三日月宗近だけでなく、本丸自体であることも判明。土佐に現れた影の正体もわかった。ここからさらにどんな展開があるのか、楽しみ。