ディズニーアニメで一世を風靡した「アナと雪の女王」のミュージカル版。プロジェクションマッピングを使って、エルサの魔法を美しく再現してことでも話題となった作品をようやく見ることができた。奇しくも、1周年記念とのこと。これからロングラン作品となっていくのだろう。



ストーリーはディズニー版と変わらないものの、ミュージカルということで楽曲は倍以上に増え、心情を歌い上げる。よく知っているディズニー版の歌にどの曲も馴染んでいて、まるで初めからそこにあったかのように場面にピタリとはまる。アンサンブルも素晴らしかった。


劇団四季の「春」劇場は、決して大きな劇場ではない。しかし、映像を巧みに使って、エルサの魔法や、宮殿、雪山を奥行き深く作り出していた。



アナ(三代川柚姫)の真っ直ぐで明るいところは、アニメ版以上の愛らしさ。ハンス(塚田拓也)と恋に落ちていくナンバー「扉あけて」はコミカルで可愛らしい。2人の結末は知っているのに、微笑ましくて可愛らしくて、観ているだけで心浮き立つナンバー。あれを踊りながら(時には担がれたり、足をくぐったり!)歌い上げてしまう四季の役者たちのレベルの高さに舌を巻く。

それに対して、人を傷つけたくなくて心を閉ざすエルサ(三井莉穂)の硬質な美しさ。怯えていたエルサが自分を解放して歌う「ありのままで」はやはり名曲。ラストの衣装替えは思っても見ないタイミングで、会場からもおお!と声が出ていた。

クリストフ(神永東吾)とスヴェン(中野高志)の息のあったやりとりも楽しいし、素晴らしい。スヴェン、どうやってるんだろう…と思うほど違和感を感じなかった。

そして登場するなり、会場を明るく笑いに包んでいくオラフ(小林英恵)。パペットに使うべき言葉ではないのだろうけれど、とても表情が豊か。目と口の開閉だけなのに、細かな足の動きや、体のしなり具合、そしてそこに声が加わることでパペットがオラフになっていく。


アンサンブルのレベルが高いのも四季の舞台ならではだが、今回外せないのが「ヒュッゲ」のナンバーだろう。一糸乱れずというか、乱れるととんでもないことになるラインダンス。大丈夫なのか?と心配になるけれど、とにかく楽しそうで、当然見ていても楽しいナンバーだった。


ストーリーを知っているのに、アナの失恋に心が痛むし、エルサの絶望に胸が詰まる思いがする。役者が目の前で演ずる素晴らしさを改めて体感できる舞台。