デレク・ツァン監督の中国と香港の合作映画。

 


過酷な大学入試に向かうため、周りと深くかかわらずにいるチェン・ニェン。ある日、同級生がいじめを苦に学校で飛び降り自殺をしてしまう。遺体にスマートフォンが向けられる中、いたたまれなくなったチェンは遺体に近づきそっと自分の上着をかけた。このことをきっかけにチェンはいじめの新たな標的になってしまう。父親はおらず、母親は詐欺まがいの仕事で家を離れているため頼れる人もない。いついじめに遭うかと怯えながらの下校中、集団暴行にあっていたシャオペイという少年を救うことになる。北京大学を目指すエリートの少女と、チンピラに使われているストリートの少年が、不器用ながら互いに手を伸ばし支え合おうとするのだが…。

 

チェン・ニェンを演じたのはチャンイーモウ監督の「サンザシの樹の下で」に出演したチョウ・ドンユイ。いろいろなことから目を背けるように終始うつむき加減の表情だけれど、時折はっとするほど明るい笑顔を見せる。チェンがもともとは、明るく屈託のない少女なのだろうなということが伝わってくる。

ストリートの少年シャオペイを演じたのはイー・ヤンチェンシー。中国のアイドルグループ「TFBOYS」のメンバーでもある彼は、流石のイケメンだけれども、自分の未来をあきらめるかのようにふてくされていた表情が、チェンと触れ合うことでどんどん柔らかな表情になっていった。

 


10代の「今」と「ちょっと先のこと」しか見えない少年少女の、相手を思う気持ちがとにかく痛みとなって伝わる。

チェンは「世界を守れる人になりたい」と泣き、シャオペイは「そんな君を守りたい」と叫ぶ。おそらくチェンのいう「世界」は、いじめに立ち向かったり告発したりできなかった友人や、犯罪すれすれの仕事をしてでも自分のために金を稼ごうとしている母や、家族もおらず、チンピラから抜け出せないシャオペイのような人たちのような、社会的な弱者を指すのだろうと思う。自分の夢を叶えるために、様々なものを振り切って勉強に没頭する姿は痛々しいし、そんな彼女を、チェンから少し離れてそっと見守ろうとするシャオペイが切ない。

 

ラストに救いがあってよかった。

 

蛇足。

韓国の入試が大騒ぎなのは知っていたけれど、中国も過酷なんだと初めて知った。まあ、科挙のお国だし、当然か。近くの国ではあるけれど、かえって普通の生活は知らないものだと改めて実感。