ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンの共演。という誘い文句だけで、予備知識なしに映画館へ。

 


イギリスの海沿いの町ライムに住むメアリー・アニングス(ケイト・ウィンスレット)は海辺でアンモナイトなどの化石を発掘し、母と二人細々と暮らしている。メアリーは幼いころにイグナシウスの化石を発掘したことで世間をにぎわせ、その化石は大英博物館に収蔵されているものの、彼女の名前は女性ゆえに記されずにいた。泥だらけになりながら化石を探し、自分を着飾ることもせず、観光客相手に土産物用の化石や、貝殻で加工した小物を売って生活しているメアリーのもとにある日一組の夫婦が訪ねてくる。ロデリック・マーチソン(ジェームズ・マッカドール)は化石収集家で、質の良い化石を採取するメアリーを尊敬している。興奮した様子でメアリーの手腕を褒めたたえ、強引に化石採取の同行の許可を取り付ける。彼の横には美しいが表情のない妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)が寄り添っていた。

ロデリックから半ば無理やりに、うつ病の妻の相手をしてほしいと頼まれ、気の進まないまま面倒を見る羽目になるが、ひょんなことから体調を崩したシャーロットを自宅に招き入れることになってしまう。若く美しいシャーロットに苛立っていたメアリーだったが、彼女の本来の明るさや、前向きな姿に徐々に心を開いていく。シャーロットも自分を支配するくせに、彼女と触れ合おうとはしなかった夫といるよりも、ぶっきらぼうだけれどシャーロットに気を遣ってくれるメアリーとの時間を楽しむようになっていた。

 

寂れたような海岸沿いの町で、スカートをまくり上げ、泥だらけになりながら化石を採取するたくましい女性の姿が映されたとき、とっさに彼女がケイトだとはわからかなかった。笑わず、いつも眉間にしわを寄せている気難し気なメアリーが、シャーロットと過ごすうちに、はにかんだり、おどけて見せたりとどんどん表情が豊かになっていく。それはシアーシャの演じるシャーロットも同じ。夫の前では生気のない表情だったのが、メアリーと過ごすうちに、くるくると表情の変わる魅力的な女性へと変わっていく。メアリーの化石を安く買いたたこうとした男に対して、彼女の採取は高い見識のもとで行われた価値あるものであるといって聞かせるシャーロットは本当に美しい。

人は誰かに求められ、必要とされてこそ輝くのだというメッセージかとも思ったが、そんなに安直には終わらなかった。メアリーはどんなに求められても、自分のしたいことを曲げられないし、シャーロットは自分が求めるものを相手も求めるものだと信じて疑わない。この2人はどこへ行きつくのか。

 

この映画には、最後まで描かれないままの部分が多く存在する。メアリーが姉を遠ざける理由、シャーロットが塞ぎ込むようになった原因、シャーロットと夫のその後の関係。そして一番が2人のその後だ。

ラストは、大英博物館のメアリーが発掘したイグナチウスの化石を挟んで見つめ合う二人の姿で終わるのだけれど、この後二人が背を向けて歩き出すのか、手を取るのかは描かれない。見ているものにそれは委ねられるのだろう。