ようやく見に行った「鬼滅の刃 無限列車編」

原作は未読。アニメのみ視聴の状態で映画館へ。

 


オープニングはアニメ最終話の炭治郎、善逸、伊之助らが指令を受け、無限列車に乗り込むところから。このオープニング映像がとにかく美しい。走り去る車窓に映る乗客の姿、夕闇の中を走る列車、その不安な行く先を示すかのような暗い荒涼とした景色。さすがufotable。

 

煉獄の明るいが、どこかつかみどころのない人となりに面喰いながらも、その鷹揚さと真っ直ぐさに信頼を置く炭治郎。

しかし、着々と罠は張られており、気づいた時には深い夢の中に堕ちていた。この堕ちる夢が悪夢でないところが懕夢の性格の悪さというか、質の悪さ。あげく、首を切ってもすでに彼自身が列車自体と融合していて、乗客は腹の中にいるも同然という状態。この厄介な下弦の壱の鬼と炭治郎、伊之助の対決が前半の見どころ。炭治郎の胆力にとにかく驚かされるが、その炭治郎ですら陥りかけた罠を見破るいのすけがカッコいい。二人でなんとか懕夢を倒し、やれやれというところに、とてつもない力をもつ上弦の鬼、猗窩座が現れる。後半は、猗窩座と煉獄との戦いが中心となる。強さを愛し、敵である煉獄のその強さを称え、鬼になろうと誘う猗窩座はとても不気味な存在。それに対して、煉獄の信念は変わらない。この揺るぎのない煉獄の強さが、幼いころの母との別れであることも描かれていく。「人より多くのものを持つものは、弱い人をその力で守らなければならない。」と言った母の言葉を、真っすぐに貫き、傷ついても傷ついても必殺技を繰り出しながら猗窩座に向かっていく煉獄の姿に涙が止まらない。

さらに、煉獄の決死の覚悟を感じ取った炭治郎の心の叫びが戦い続ける煉獄の姿に重なって胸を打つ。

人はもろく、いずれ老いて死を迎える。終わりがあるからこそ、人は儚く美しい。だからこそ人は「今」を必死に生きていかねばならない。

煉獄の思いと、その思いを受け取った伊之助が炭治郎に語る言葉にも涙涙。

 

緩急のある動きに加え、精密な描写のなかに、あえて筆で描いたような輪郭線。相変わらずufotableは場面の見せ方がうまいなぁと思う。もちろん原作の持つストーリーのよさがあってだろうけれど、うまく場面を選んでいるのだろうと思う。原作未読でも十分に楽しめた。

そして、ここぞというところでの「炎」。梶浦由記さんの音楽もともと好きだけれど、この場面で入れてくるのか…と思うくらいのドンピシャのところでかかってきて、製作の思うつぼでした。

 

何度も見る人が多いというのも納得だけれど、炭治郎にとってつらい描写も多いので、観るときには覚悟がいるなとも思った次第。

それにしても、猗窩座の石田彰さん。猟奇的な役どころが本当にお上手で…流石でした。