カナダのグザビエ・ドラン監督作品。

 


幼馴染の青年が、友人の妹の自主映画で男性同士のキスシーンを演じることになる。賭けに負け仕方なく了承した二人だったが、キスしたことをきっかけに、関係がぎくしゃくし始める。

マット(マティアス)は、まじめで神経質な弁護士の青年。美しい婚約者もいて順風満帆のはずなのに、キスした翌日から幼馴染のマックス(マキシム)の顔がまともに見られない。2週間後にはオーストラリアに行こうとしている大事な友人なのに、これまでのように気軽に連絡がとれなくなり、イライラして周囲にあたってしまう。

一方のマックスは、右のほほに目立つ痣を持ち、バーで働きながら、アル中で弟を溺愛する母を見捨てられずに面倒を見ている心の優しい青年。特にこれといった目的はないが、オーストラリアで働こうと一念発起し、身辺の整理をしている。

 

彼らの背景も、マックスのオーストラリア行きの理由もほとんど描かれないが、キスの後のマットのいら立ちから二人の微妙な関係がうかがえる。最後のパーティでマックスに悪態をついてしまったマットが、マックスに謝りに行き、そこから感情が溢れ出したかのように深いキスを交わす場面で、やっとマックスがマットのことをずっと好きだったのだろうなということが見えてくる。マットはキスしたことでマックスへの感情が友情なのか愛情なのか混乱しており、戸惑っていることも伝わってくる。

 

言葉足らずの映画と言ってしまえばそれまでだけれど、二人のもどかしさがこの映画の肝なのだろうなとも思う。

何より、彼らを取り巻く友人たちが魅力的。軽くてお馬鹿で、でも何となく二人のことを察しているような、気持ちのよい友人たち。彼らの存在が、この映画を現実的なものにしていると思う。

空港へ出発しようとドアを開けた時のマックスの何とも言えない表情と、どうする?と目で聞いてる友人のフランクが秀逸。