ドイツを東西に分けるベルリンの壁ができたのは1961年。この映画は、壁ができる5年前の旧東ドイツで起きた実話をもとにしている。


東ドイツの高校へ通う優等生のクルトと、お調子者だが熱血漢のテオ。2人はクルトの祖父の墓参りに列車で西ベルリンへ行き、潜り込んだ映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を目にする。翌日の教室で、蜂起したハンガリー市民のために2分間の黙祷を提案する。若者らしい正義感のもとの行動だったはずなのに、彼らの行動はソ連の影響下にある東ドイツでは、国家への反逆とみなされ、当局からの調査が入ることとなってしまう。
当局の役人から、首謀者は誰なのか、一人ひとりに尋問され、密告するように促されていく。

自分の将来を守るため、友人を密告するのか。友人を守って出世コースから脱落するのか…。究極の選択が18歳の青年たちに突きつけられる。大学進学の試験を前に、苦悩する彼らの姿が息苦しいほど伝わってくる。
出世コースから外れるくらいなら、西ベルリンにいくしかない。ただし、西ベルリンに行くということは、それまでの友人や家族を東ドイツに置いていくということでもある。

かつて壁があったことを知らない世代もいる。壁ができる前に、こんな事件があったことを、私はこの映画で初めて知った。
知らない世代にこそ見てほしい映画だと思う。