くるみ割り人形と秘密の王国を観てきました。



テムズ川から段々と上昇し、鳥のような俯瞰の視点からロンドンを見下ろしたり、フクロウと共に街並みを抜けながら、クララたちの家に焦点化していくオープニングは映像も音楽もとてもよくて、期待大だったのだけれど…見終わった後はなんとなく宙ぶらりんな印象になってしまった。

主役であるクララ(マッケンジー・フォイ)は可愛らしいし、母親を亡くした喪失感とどう向き合えばいいかわからない少女をよく演じていた。不思議な世界に行ってからの衣装も可愛らしくて素敵。
最愛の妻を失い、うまく子どもたちと向き合えない不器用な父親(マシュー・マクファデン)も、出番は少ないものの好演。
大きなストーリーである、愛するものを喪失した家族が、改めて互いの絆を結び直すというテーマは王道。

なんだか中途半端に感じる違和感は、異世界の部分。母親が見つけた不思議な世界=秘密の王国なのに、クララがそこに導かれるのは叔父からのクリスマスプレゼントの隠し場所を示すリボン。そもそもどうやって叔父(モーガン・フリーマン)は入り込み、クララのプレゼントを隠すことができたのか(フリーマンの使い方ももったいない。あの役必要なんだろうか…)。タイトルを真っ向から否定するし、叔父がどんな重要な役割を果たすのか…と期待したものの特にその後何もなし。また、戦争中であるはずの第4の国はいったいどこと戦闘中なのか、なぜマザー・ジンジャー(ヘレン・ミレン)は裏切ったと思われているのかと結構な疑問点が置き去りにされ、回収されないまま悪役を成敗して終わり。あのラストも大人向けだったのか、子ども向けだったのか…。
シュガー・プラム(キーラ・ナイトレイ)が心のない兵隊をブリキのおもちゃで作ろうとしたことと、クララが彼女をおもちゃに戻したことにあまり違いはないように思う。プラムは自分の欲望のために自分の言う事を聞く兵隊を作ったけれど、クララは自分の言い分を聞いてくれないプラムを人形に戻す。どっちも子どもなんだな〜と思うけれど、子ども向けにしては救いがないし、大人向けにしては深みのないストーリー。いったい誰がターゲットだったんだろう…そこも中途半端に感じた要因かもしれない。

この時期にぴったりだし、音楽も映像も美しかっただけになんとも残念。