ソフィア・コッポラ監督。女性を綺麗に撮る監督だなぁという印象なのは、ヴァージン・スーサイズの印象が強いせいだろうか…。ストーリー自体はあまりよく覚えてないのに、女の子たちがとってもキラキラしてたことだけ記憶にある。
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さて、本作。
南北戦争中の女学校に、生徒の1人が負傷した敵軍の兵士を連れて帰ったことから物語は始まる。さまざま事情で家に帰れず学校に残った5人の10代の少女たち。彼女たちを教えるエドウィナ。厳しくも凛とした園長のマーサ。そこに敵兵士とはいえ、ハンサムで人当たりのよい男性が転がり込むのだから、何も起こらないわけがない。
少女たちはいつもより少しだけお洒落をしてソワソワと落ち着かず、兵士(ジョン)が病室がわりにしている音楽室をウロウロする。エドウィナとマーサも落ち着かない。ジョンは少女たちに優しい言葉をかけながらもエドウィナに惹かれ、愛を囁く。
1人の男性を巡り、互いに牽制しながら駆け引きをしているうちはよかったものの、そのバランスが壊れた時の女たちのとる行動とは…。

南北戦争を描いてはいるものの、戦闘シーンは出てこない。ただ、学校にいても聞こえる遠くの爆撃音と上がる煙の様子。それだけでも十分に戦争の足音を感じさせる。これは上手い。露骨に描かない分、少女たちが敵兵であるジョンを、同じ人間だと感じ興味を持っていく様子が伝わってくる。女たちにとって、戦争はひたひたと近寄ってはいるけれど、姿の見えないものなのだ。


ここからネタバレ含みます。


ジョンに学校を去るように告げ、晩餐を用意したマーサはお休みの言葉を交わすジョンとキスしそうなほど近付きすぎて我に帰る。今夜部屋に行くよと囁いたジョンを、新しい下着を身につけて待つエドウィナ。足音は聞こえたのに自分の部屋に来ないのを不審に思い、物音のする部屋で見てしまったのはアリシアとコトに及んでいるジョンの姿。言い訳するジョンを突き飛ばしたところ、彼は階段を落下し怪我した脚が砕けるほどの大怪我を負わせてしまう。そんな彼を目にしたマーサは脚を切り落とすことを決断する。壊死した脚からの死を回避するためだが、知らぬ間に脚を切断されたジョンは荒れて少女たちを脅し、怯えさせる。今怖いのは遠くにある戦争ではなく、目の前の男。後半に戦争の爆撃音は聞こえない。彼女たちを怯えさせるのはジョンの暴れる音と、怒鳴り声だ。このままでは少女たちにも危険が及ぶ…とマーサがとった手段は、ジョンが来なかった状態に戻すことだった。

好きになった男と出て行きたかったエドウィナ。少女たちを守りたかったマーサ。エドウィナはジョンを殺したマーサたちを非難するでなく、ラストシーンではジョンの死体袋を縫う少女たちに緩く縫うようにアドバイスさえする。
エドウィナは出ていかない。門の(檻のように見える)外に出ていかず、留まるのである。よくよく考えて見ると、少女たちはジョンを見つけたエミリー以外、誰も門の外に出はしない。マーサも決して門の外には出ない。この時代を生きる女性たちの姿の象徴なのか?秘密の共有という意味なのか?

ともあれ、ニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニングという美女揃いの学校に迷い込んだら、そりゃ誘惑にかられるよね…とコリン・ファレルが気の毒にもなる(笑)

やはりソフィア・コッポラは女性を撮るのが上手いんだろう。結構酷いことをしてる彼女たちは最後まで美しい。女のエゴというか、都合の悪いことは無かったことに…という怖い面をあれだけ淡々と描けるのは、やはり女性監督だからなのかな。あんな男、仕方ないよねと思ってしまったら、私も彼女たちと共にあの檻の中で過ごせてしまえるのかもしれない。