譯『大方広佛華嚴經』巻下(江部鴨村 訳,昭和10年) 

404〜405頁


仏子よ、菩薩大士に十種の自由がある。

十種とは何んであるか?

一には寿命の自由である。無量無辺の説くべからざる劫に寿命を保持するから。

二には心の自由である。数うべからざる三昧を出生して深智に入るから。

三には荘厳の自由である。大荘厳をもって悉くあらゆる国土を荘厳するから。

四には業の自由である。随時に報いを受けるから。

五には受生の自由である。あらゆる国土に生を示現するから。

六には解脱の自由である。あらゆる世界にあらゆる諸佛の充満したもうを拝むから。

七には願の自由である。時にしたがい国土にしたがって菩提を成就するから。

八には神力の自由である。あらゆる大神変を示現するから。

九には法の自由である。無量無辺の法を示現するから。

十には智の自由である。念々のあいだに如来の十力・四無所畏を覚ることを示現するから。

仏子よ、これが菩薩大士の十種の自由である。

もし菩薩大士がこの法に安住するならば、すなわちあらゆる諸仏・菩薩の究竟し成満せる一切智の自由を得るだろう。


(旧字体、旧仮名遣いは改めました)