全譯『大方広佛華嚴經』巻下(江部鴨村 訳,昭和10年)
345頁
仏子よ、菩薩大士に十種の弁才がある。
十種とは何んであるか?
一には一切法において分別のない弁才である。
二には一切法において所作のない弁才である。
三には一切法において所著のない弁才である。
四には一切法において空を了達する弁才である。
五には一切法において疑闇のない弁才である。
六には一切法において仏の加被したもう弁才である。
七には一切法において自ら覚悟する弁才である。
八には一切法において巧みに言句を駆使する弁才である。
九には一切法において真実を説く弁才である。
十には一切衆生の心に随って歓喜せしめる弁才である。
仏子よ、これが菩薩大士の十種の弁才である。もし菩薩大士がこの法に安住するならば、すなわち如来の此上なき巧妙の弁才を得るだろう。
(旧字体、旧仮名遣いは改めました)