譯『大方広佛華嚴經』巻下(江部鴨村 訳,昭和10年) 

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仏子よ、菩薩大士に十種の弁才がある。

十種とは何んであるか?

一には一切法において分別のない弁才である。

二には一切法において所作のない弁才である。

三には一切法において所著のない弁才である。

四には一切法において空を了達する弁才である。

五には一切法において疑闇のない弁才である。

六には一切法において仏の加被したもう弁才である。

七には一切法において自ら覚悟する弁才である。

八には一切法において巧みに言句を駆使する弁才である。

九には一切法において真実を説く弁才である。

十には一切衆生の心に随って歓喜せしめる弁才である。

仏子よ、これが菩薩大士の十種の弁才である。もし菩薩大士がこの法に安住するならば、すなわち如来の此上なき巧妙の弁才を得るだろう。


(旧字体、旧仮名遣いは改めました)