全譯『大方広佛華嚴經』巻上(江部鴨村 訳,昭和9年)

868〜869頁


願わくばこの無縛無著の解脱心の善根をもってことごとく一切諸仏の境界に入りつねに諸仏の虚空界に等しき無数の清浄なる法身を見たてまつり、相好荘厳し、神力自在に、梵音微妙に、具足して広く無礙の正法を説きたもうを、聴聞して能くことごとく受持し、かの仏身において有とする所なしと了(わか)り、ことごとく普賢菩薩の無量の大願をえて、永(とこし)えに衆生の忘想倒見を離れよう。

願わくばこの無縛無著の解脱心の善根をもって一切の世界に入り、仰げる世界に入り、俯(うつむ)ける世界に入り、一念のうちによく悉(ことごと)くあまねく十方世界のあらゆる仏国に入り、因陀羅網の世界を分別し、あらゆる平等の法界を分別し、雑然たる世界をことごとく一形とならしめ、無量の方便をもって甚深の法界に入り、無量の種々の世界をみな虚空の如くにして而(しか)もまた世界の性を壊(やぶ)らず、普賢の行を修めて菩薩の地に住しよう。

願わくばこの無縛無著の解脱心の善根をもって能(よ)くことごとく一切もろもろの想を分別し、すなわち衆生の想・法の想・仏国の想・方の想・仏の想・世間の想・業の想・行の想・解脱の想・根の想・時の想・受持の想・煩悩の想・清浄の想・成熟の想・諸仏を見たてまつる想・法輪を転ずる想・法を聞きて理解する想・調伏する想・種々の方便を出生する想・種々の地の想・菩薩に入る想・菩薩の功徳を修習する想・菩薩の三昧を正受する想・菩薩の三昧を出づる想・菩薩の境界の想・劫の成壊の想・明の想・暗の想・昼の想・夜の想・半月一月一時一歳の変異する想・去る想・来る想・坐る想・立つ想・覚める想・眠る想——このような一切もろもろの想を一念のうちに能(よ)くことごとく了知し、心に虚妄なくして悉(ことごと)くもろもろの想をはなれ、心に所著なくして障礙を遠離し、あらゆる如来の智慧充満し、あらゆる仏法をもって善根を長養し、あらゆる仏身をもってその身に薫じ、つねに諸仏のために摂取せられ、白浄の法において未だかつて退失せず、よく平等の正覚を修学して彼岸を究竟し、諸仏・普賢の所行を修行して諸願を具足し、如来の記を受けて一念のうちに方便の地に入ることを得て、究竟の智慧を満足し安住しよう。


(旧字体、旧仮名遣いは改めました)