全譯『大方広佛華嚴經』巻上(江部鴨村 訳,昭和9年)

784〜785頁


菩薩摩訶薩はもし人が来て王の首都及び厳めしく装飾せる大城を乞い求めるならば、歓びの心をもって施し、乱れざる心をもって施し、一向にもっぱら菩薩を求める心をもって施し、無量の願心をもって施し、大慈の心をもって施し、大悲の心をもって施し、清浄の心をもって施し、あらゆる衆生を利益せんがための故に施し、みずから大乗に安立せんがための故に施し、諸仏の法たる平等の心をもって施し、善法を行ずる心をもって施し、一切智の王たらんと欲する心をもって施し、法王の自在の意を求めんがための故に施し、智慧を増大せんがための故に施し、あらゆる清浄の功徳を求めんと欲するが故に施し、堅固にして広大なる心をもって施し、あらゆる善根を長養せんがための故に施し、衆魔を遠離して仏智を具足せんがための故に施し、菩薩の心力に安住せんがための故に施し、一切の境界・一切の智・菩薩の行ずるところ・及びもろもろの大願を究竟せんがための故に施す。菩薩摩訶薩は首都及び厳めしく装飾せる大城を施し、それに由って得るところの善根を次のごとく回向する

「願わくば一切衆生をして一切の国土を浄め、諸仏に奉施して住処となさしめよう。

 願わくば一切衆生をして常に寂静(じゃくじょう)清閑の地を求めて清寂に安住せしめよう。

 願わくば一切衆生をしてあらゆる国土・都邑・聚落・大小の諸城に執著せず、究竟して欲を離れてすぐれた寂静を得しめよう。

 願わくば一切衆生をしてあらゆる世間に親近せず、悉くみな永えに世間の語言を離れしめよう。

 願わくば一切衆生をして離欲のころを得て、持てるものを施し、心に後悔することなからしめよう。

 願わくば一切衆生をして家業に依止することなく、浄直のこころを得しめよう。

 願わくば一切衆生をして住処に著せず、あらゆる家居への貪著を捨てしめよう。

 願わくば一切衆生をしてもろもろの苦悩を捨てて、あらゆる恐怖や憂感を除かしめよう。

 願わくば一切衆生をしてあらゆる世界を厳浄の国土として以て諸仏に奉施せしめよう」と。

 これが菩薩摩訶薩の首都及び厳めしく装飾せる大城を布施する善根の回向であって、一切衆生をして仏の住処を厳浄ならしめる。


(旧字体、旧仮名遣いは改めました)