譯『大方広佛華嚴經』巻下(江部鴨村 訳,昭和10年) 

433〜434頁


仏子よ、菩薩大士に十種の発心(ほっしん)がある。十種とは何んであるか?

一には衆生を度脱する心を発(おこ)す。

二には一切衆生の煩悩を抜出する心を発す。

三には一切衆生の習気を断除する心を発す。

四にはあらゆる疑惑を断除して純浄無垢の疑惑なき心を発す。

五には一切衆生の苦悩を除滅する心を発す。

六にはあらゆる悪世間の諸難を除滅する心を発す。

七には一切諸仏のおしえに随順する心を発す。

八にはあらゆる菩薩の所学を学ぶ心を発す。

九には一切諸仏の菩提をさとって一切衆生に示現し、凡愚のものの窺い知ることの出来ない心を発す。

十には大法鼓を打って音声十方に徹し、あまねく一切衆生の諸根を照す心を発す。

仏子よ、これが菩薩大士の十種の発心である。

もし菩薩大士がこの心に安住するならば、すなわち一切諸仏の此(この)上なき発心を得るだろう。


(旧字体、旧仮名遣いは改めました)