譯『大方広佛華嚴經』巻下(江部鴨村 訳,昭和10年)
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寂静音夜天
そのとき善財童子は妙徳救護衆生夜天のみもとに於いて菩薩の「衆生を教化する法門」を聞いて了知し信解して自在に安住し、かくて寂静音夜天のみもとに詣で、頭面に足を礼して幾度びとなく右にめぐり、恭敬し合掌して一面に止まり、
『天神よ、私はすでに阿耨多羅三藐三菩提心をおこし、善知識に依つて菩薩の行を学び、菩薩の行に入り、菩薩の行を修め、菩薩の行に住したいと思ひます。天神よ、願はくば慈愍して私のためにお説きくださいませ。』
そのとき夜天が善財に告げられるやう『善いかな、善いかな、善男子よ、御身はよくぞ菩薩に依つて道を求められる。善男子よ、自分は菩薩の「無量歓喜荘厳法門」を成就してゐる。』
善財いふ『天神よ、その法門はいかなる作用を具し、いかなる境界を行じ、いかなる方便を起し、いかなる観察を作すかをお示しくださいませ。』
答へていふ『善男子よ、自分は一切衆生の心海を浄め、塵垢を除き、清浄荘厳のこころを断じないで、境界を退かざる堅固の心・不動の心・決定して功徳の荘厳