引っ越した家は、低所得者層向けの市営団地だった。
電車の駅からバスで20分、さらにそこから歩いて10分という不便な場所に
20棟ぐらいある市営団地で、低所得者や障碍者をひとまとめにして
放り込んでおくための住宅街だったらしい。
住んでいるのは、定収入が得られない家庭や母子家庭、障碍を持つ子供のいる家庭、
認知症の年寄りがいる家庭など、生活保護を受けているような家庭ばかりだった。
外には育児放棄された知恵遅れの子供が何人も暴れていて、
認知症になって介護放棄された年寄りがよだれを垂らしながら徘徊し、
複雑な家庭環境で育って非行に走ったタチの悪い中学生がうろうろし、
自転車で追いかけてナイフで切りつけてくる不審者が出没し、
子供の誘拐やいたずらなどの犯罪も勃発するような地域だった。
住民の民度も低く、知性も教養もないような人達ばかりで
ご近所トラブルはしょっちゅう、主婦達はよその噂話や悪口ばかり言いまくり、
人の家に無駄に干渉してくる。
スラム街といっても過言ではないような住環境だったと思う。
実際、少しまともな家庭はしばらく住むと別の地域へ引っ越していった。
いま当時の情景を思い出そうとすると、灰色でしかイメージが出てこない。
晴れの日でも私の目には灰色にしか映っていなかったようだ。