「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」①マフェトン理論「fat as fuel=燃料としての脂肪」 | S blog  -えすぶろ-

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-人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ- 『BORN TO RUN』より
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前作「BORN TO RUN」では、「走る」ということをとことん突き詰めて感動を与えてくれたマクドゥーガル、今回挑んだのは、人類が本来持っている「野生のスキル」の探究です。人間にとっての自然な動き=ナチュラルムーブメントについて、そして人間にとっての本来の食事・エネルギー源についてが究明されていきます。

私が糖質制限を始めてもうすぐ2年になりますが、始めたきっかけとしては、この本とマフェトン自身が書いた本からの影響が一番大きかったです。今回はその部分のご紹介。

 

●マフェトン理論

1980年代、カイロプラクターで長距離走やトライアスロン等のトップアスリートを治療・指導して好成績を上げさせた実績を持つマフェトン博士。彼のトレーニング理論がこのマフェトン理論です。本の中では実際に著者のマクドゥーガルがマフェトン本人から直々に教わり、この理論を体験しています。

 

人間はほかのどの動物よりも遠くまでこの地上をさすらってきた優秀な持久系アスリートだ。しかもそれはゲータレードやベーグルのおかげではない。われわれはもっと豊富でクリーンな燃料に頼ってそれを成し遂げた。自分の体脂肪だ。

「トレーニングのポイントは、身体がエネルギーを得るやり方を変えることなんだ。もっと脂肪を多く燃やし、糖を減らしたほうがいい。」

「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」p.359より

 

「fat as fuel=燃料としての脂肪」をフル活用することこそ持久系運動には必須の能力であり、その為に行うべき以下の2つを上げています。

 

①2週間テスト

徹底した糖質制限食を2週間食べ続けてみる。

・食べていいもの:野菜類・肉・魚・チーズ・卵・豆腐・ナッツ・無糖の野菜ジュース

・食べてはいけないもの:米・パン・麺類・豆・果物・果汁・ミルク・ヨーグルト・もち・いも・菓子類

・空腹にならないように我慢せずに食べて良い。特に卵は好きなだけOK。

マフェトンが書いた本では、この2週間テストで自分の体調にどんな変化があったかをよく見極め、徐々に糖質量を増やしてみて、自分にとって一番良い分量まで戻して良いと書かれています。但し血糖値を急上昇させてしまい、糖化による血管の損傷も起こすので、砂糖は極力摂らず、白米・食パン等主食類も玄米・全粒粉のパン等、未精製のものを薦めています。

 

②180公式

心拍数が上がり過ぎると身体は「緊急事態!」と受け止めて緊急時のエネルギーである糖質を燃やそうとする。脂肪を燃やすには適正な心拍数の上限がある。その公式が

180-年齢=脂肪燃焼の適正心拍上限数

怪我や不調が続いていればここから更に5を、病後すぐなら10を引き、逆に2年以上怪我もなく上手くトレーニングできていれば5を足す。これが180公式です。マフェトンはレース期の最長3ヵ月以外は全てこの180公式でトレーニングすることを推奨しています。

 

マフェトンは他にも今では常識になってきているものの、当時の長距離界の常識とは真逆だったソールの厚いシューズの危険性や、身体に悪いのは脂質ではなく糖質、特に精製された糖質で、レース前のカーボローディングも一切不要ということ等を自著には書いており、その先見性には素晴らしいものがあります。

 

マフェトンが書いた本はこちら↓

 

私は二年前にこの2週間テストをやってみた結果、食後の眠気や消化不良等も無くなり、滅茶苦茶、体調が良くなり、体重も2kg位すぐに落ちたので、糖質制限をそのまま継続することにしました。不思議なものであんなに大好きだったご飯やラーメン、パスタ等も特に食べたいと思わなくなりました。更に3月のマラソンレース後には100日間、180公式=心拍数130以内でのトレーニングだけをやり続けてみました。最初は7'30/km位しか出せませんでしたが、徐々に130以内で出せるスピードも上がり、6'20/km位まで上げられるようになりました。このトレーニングのおかげで故障しまくっていた脚を確りとリセットできたと思います。

 

「エネルギーをつくり出す状態にはすべて、具体的でリアルな感覚ベースの反応がある。身体はその状態を、世界がどのように『見える』か、『聞こえる』か、『感じられる』かで知るのだ。脂肪を使う楽な状態に移ると、視覚情報はくっきりと広がって、立体的になる。周辺視野の広がりと拡張性は独特でまちがえようがない。まるで3Dサラウンドヴィジョンの映画館にいるかのようだ。」
その時あなたは狩る側(ハンター)の目で見ている。だが心拍数が上がると、狩られる側になるのだ。
「もっと高負荷の、糖を燃やす状態に移るとすぐ、視覚情報は内側に向かって崩れ、周囲は消えがちになり、意識はもっと狭い視野に集中させられる。視覚イメージは平坦に、二次元的になり、内壁に世界が描かれたトンネルのなかを走っているかのように思いはじめるのだ」
それはまさしく、狩猟採集民がアンテロープを死へと追いつめる方法だ。狩猟採集民は自分たちが仕留めようとしている動物と同じようには行動しない。むしろ、静かで優雅に、軽やかに動き、視覚は鋭く、呼吸はコントロールされ、体脂肪という無限のエネルギーはいつでも使える状態にある。

「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ」p.364より

 

「BORN TO RUN」の著者ならではの、このランニングに関する見事な表現、素晴らしい!

 

狩猟採集民が獲物を追いつめる「追跡猟」についてはこの記事参照↓
BORN TO RUN -走るために生まれた- ①人類の体は長距離走用に進化した

 

心拍数管理のマラソンへの有効性についての記事↓

フルマラソン 30kmまではペースではなく心拍数を一定にして走った結果