エピソードにして200話以上の生原稿が531枚!!!
まさかここまで大量の原画を公開してくださるとは思わなかったので、主催者様に大感謝な展示でしたお願い
だって、漫画黎明期の、漫画の神様の、肉筆の漫画原稿ですよえーん
伝説の、生の仕事がこうやってまだ現存し、目の前で見られるんだもの。すごいことですキラキラ

531枚全てに大感動でしたが、何より私の一番好きなシーン「おこがましいとは思わんかね」の原画を見れたことが本当にありがたかったです。
ご存知でしょうか。幼少期に不発弾で体がバラバラになったブラックジャックを救い、医者になるきっかけをつくったブラックジャックの恩師・本間丈太朗先生が亡くなる回です。




この本間先生のセリフ、私は医者ではないけれど、人生で何度反芻しただろう。(左の黒いパネルのセリフ)

今回の展で、手塚先生の医師免許、医学ノート、博士論文が見られたこともありがたかったです。驚きました。手塚先生の描かれた細胞スケッチや解剖図をまさか見られるとは思わなかったから!
手塚先生の文字をじっくり見たのは初めてかも。整ってて几帳面できれいな文字。

私は、人生やり直せたら今度はどういう進路をとりたい?と聞かれたら「医大で医学を勉強して漫画家か外科医になりたい」と答える(まんま手塚先生じゃないか!笑い泣き)ような医学と化(科)学と生命に興味がある人間なので、この展示は興奮したー炎
何を隠そう、私が人生で一番褒められた絵は、微生物や細胞の点描スケッチなのだ!描くたび理科室の廊下に貼り出された!(中学の生物の授業のやつ)

手塚先生がガチの医療人ゆえ(漫画家をとったので医者にはならなかったが)、医療や人体の描写がとても緻密で正確な上、手塚先生の医学思想がブラック・ジャックにはよく出ていて、私はブラック・ジャックが手塚作品で一番好きな作品です。(これを少年チャンピオンで連載したってすごい!)

一見悪役に見えるDr.キリコの存在も、あんぱんまんでいうばいきんまんではないですが、表裏一体である、と大人になるにつれ見方が変わりました。最近尊厳死という医療にも興味があります。
病気が悪で健康が善なのか、医療は必要か(どこまで必要か)、「健康」とは体に病気がないことだけをさすのか、医療と金、医療でどうにもできないこともある(むしろ多い)、人体にはまさかな奇跡がある、死とはなにか、命をどう使うか、命は輝く、医者は切ない(それは命あるもの全て、か)……読みながら色んなことを考えさせてくれる作品です。
もちろん手塚先生と医学思想で違う部分もちょっぴりありますが(移植関係)

ブラック・ジャックは漫画の流行が劇画ブームに移り、手塚はもう古い、なんて言われて手塚フィーバーが下火になった頃の作品だそうですが、当時虫プロが倒産しここまでの負債を47歳の手塚先生が抱えていたとは知りませんでした。
あれだけヒット作があるのに印税とかでどうにかならないんだ!?
この劇画ブームに手塚先生がここまで苦しんでいたということを知りませんでした。
劇画ブームによって現れた偉大な漫画家はたくさんおり(私の好きな水木とか楳図もそう!)、語り継がれる名作も多々なので劇画ブーム自体を決して否定はしませんが。

この劇画ブームの転機のように、私にとって今、漫画がデジタル化(制作も媒体も)に移行しアナログで描いている先生が減ってきており、アナログ原稿を扱えない編集さんもいたり、アナログ画材がなかなか手に入らなかったり、文字の写植も自分でどうにかしなきゃで、あぁぁ…この先どーすんだ…と漫画制作を続ける上での先行きに悩む転機です。
画業の友人に、スクリーントーン製造終了したらどーするん?と聞かれたりしますが、点描もカケ網もフラッシュ線も服の柄も全部自分で描く!と答えると、そっちかーい!って笑われますにやりアセアセ
効率悪かろうが(ずっとそうやってきたのでそれをイチイチ効率が悪いと感じないが)そういう作業も含め漫画を描くことが好きだし、ベタフラッシュとかの効果ももっとうまくなりたいし…描くのも見るのもそういう質感が好きだし!…こういう気持ちは「こだわり」なのか「執着」なのか…。
私はトキワ荘でいうところのテラさんです。変われないんです。
新しく漫画を描き始める時には必ずテラさんのことを思い出したり、戒名を紙に鉛筆で書いてみたりするくらいテラさんにシンパシーを感じています。
劇画ブームでズタズタになったのはテラさんだけだと思いきや、手塚先生も結構な影響を受けていたのだなぁ…と。しみじみ。手塚先生だけは安泰の地位だと思っていたので。
でも手塚先生が今もご存命だったら絶対デジタルに手を出しただろうしSNSとかもやってたと思う♪ウシシ
むしろああいう方は効率よく頭の中のネタを最速で形にして世に残していった方がいいのかもしれない。

しかし手塚先生の生原稿を見て思うのが、(アシスタントさんが描いたのだと思うけど)カケ網などの効果や小物、モブ、背景(特に自然物)の繊細で丁寧な美しさよ…
ほっっっとんどスクリーントーンを使っていないし。
線の柔らかさ、勢い、動きよ…
少女漫画的な大ゴマ変形ゴマを使っていないのにこの印象に残る見せ方よ…
このページ数、読み切り形式でこの内容をやれる、しかも詰め込みすぎて息苦しくなっていない構成よ…
天才だ神様だと言われているけれど、本当にそうなのだと分かりました。

私は原稿中ホワイト(修正)だらけになっちゃうのですが、手塚先生もめっちゃホワイトだらけで嬉しかったですウシシ

過去作のキャラ(アトムとかサファイアとか)を出したり、後輩のネタ(バカ田大学とかタケコプター)を出したり、そういう遊び心には今回初めて気付きましたラブラブ

帽子、メガネ、ペン、インクが展示されていました。
やっぱ大御所はみんなこのインク使ってるなぁー。ふむ。
手塚先生は紙は一体なにを使ってたんだろ?なんかツルッとしてケント紙じゃなさそうだったけど。
漫画家って帽子かぶってるイメージが強い(手塚先生、松本零士先生など)(どういう理由なんだろね?)から、私もなんか帽子かぶろうかしらルンルン

結論:ピノコはやっぱり可愛いハート




会場出たらすっかり夜笑い泣き
毛利庭園からの写真ですニコ