国家公務員だった父は
自分が高齢になっても、自分のペースで仕事ができるので
自宅で商売している人のことを
しきりに羨ましがっていたものだ
父は、身体が利けば
最後の最後まできっと何かしら仕事をしたかったのだろう
私は年5回、1人でお墓参りをしている
その時に必ず関わるお店が3つ
ひとつはお花屋さん
次は現地にある家族経営の小さなコンビニ
最後は現地で昔から長く営業しているお餅屋さん
観光地に大昔からあるお餅屋さんは、実は私が子供の頃から
その地を訪れる度に購入している店
最近では私は定期的に行っているので
もしかしたら、そろそろ記憶に残ったりしてるのかなぁと
期待するも、全くその気配なし
何度行ってもただの観光地のお土産物屋でしかない
観光地なんてこんなものだけど
正直、がっかり
お墓用の花を買う店は
最初は田舎だからか私が2ケ月に一度しか行かないからか
全く商売っ気を感じない女性店主だった
ところが2.3年前になって漸く私を認識してくれ始めたのだ
そして、毎度、何の目的でどこへ行く為の花かを
繰り返し話すようになり
最近ではマスク越しでも気づいてくれるようになった
これは、嬉しい変化だった
そして、現地にある家族経営の小さなコンビニ
ここは、最初はお父さんが店番をしており
時折、高齢の車椅子の女性を介護する姿を見かけたのだが
その後、その店主の息子が店を受け継いだようだった
その店で、私は毎回ある缶コーヒーを購入するのだが
(普通のコンビニではほぼ取り扱いが無い商品)
私の好きなそのコーヒーだけが
冬場に温めてもらえていなかったのだ
普段はいいとして
10.12月は流石に凍えるお天気の中でお墓参りした後など
温めてあるといいな・と伝えたことがあったのだ
そして、先日またその店に行った時のこと
いつものように冷たいコーヒーをレジに持って行くと
若い店主の彼が
「よかったら、温めてますけど」と
はにかみながら伝えてくれたのだ
これには思わず相好を崩してしまった
いつも寂しく心細い気持ちとふたり連れでのお墓参り
時間のロスが無いように、黙々とスケジュール通りにこなして
いささか緊張している私が最後にいつもホッとできる缶コーヒー
あの若い店主だけは
私を見知ってくれていたなんて
温められたコーヒーと彼の気持ちに
久々に心もじんわり
温められた