ウクライナ側、ゼレンスキー大統領の側を積極的に応援しないで、ロシアとの間でバランスを取ろうとする考えを「客観性」のあるものであるかのような言論が未だに広がっていることには、私は危機感を感じている。

ゼレンスキーが100%の善であるとは私は全く思っていない。それは私個人のYouTubeチャンネルなどでも私が繰り返し述べてきたところである。

日本の国会演説前にゼレンスキー大統領に対して宛てた手紙(ウクライナ大使館に書面を提出した上で、メールでも送付)の中でも、私はウクライナが完全な善だとは言えないことを取り上げながら、ドイツ議会でドイツを断罪したゼレンスキー演説は身勝手だと批判している。

それでもプーチンの悪と比べたら遥かに小さいと見るべきだし、今ゼレンスキーの悪に焦点を当ててウクライナ側を支援しないように動くことにどれほどの意味があるのかというのを、冷静に考えてもらいたいのである。

そもそもプーチンは東部2州の一部でロシア系住民に対して「ジェノサイド」が行われていることを理由に他国に軍を派遣することを行ったわけだが、そのこと自体が「当然」のことなのか。しかも攻撃を始めたら東部2州のみならず、政権を転覆して傀儡政権の樹立を目指した全面侵略をしている。こんなことは何があっても許されるべきではないだろう。

仮に韓国で「日本人」ではなく「日系韓国人」が「ジェノサイド」に遭っているとして、日本がその「ジェノサイド」を止めるべきだとして軍を韓国に派遣するのは「当然」のことなのだろうか。さらにその際に「ジェノサイド」が行われている一部地域のみを問題にするのではなく、韓国の体制転換を図るために全面侵略に出るような動きに出ることが正しいことなのか。私はこの論理が全く理解できない。

プーチンならそこまでの無茶苦茶な力の論理を振り回すのは当然だと考えて、ゼレンスキー大統領は妥協を見つける外交交渉を行うべきだったのだろうか。自国の安全保障を獲得するために、同じような価値観を共有するグループに近づいていくことは間違っていたということなのだろうか。なぜそこまでしてプーチンの持ち出す力の論理を尊重しなければならないのか。

親ロ派のヤヌコビッチ政権をひっくり返すためにアメリカのオバマ政権がウクライナ工作を行っていたのは確かだ。ではロシアは一切そのような工作を行っていたわけではないのか。親欧米派のユシチェンコ大統領が大統領選挙のさなかに大量のダイオキシンを摂取させられて食中毒を起こし、ひどい皮膚病を発症したことがあったが、それは大したことではなかったのか。ロシアによるクリミア併合の前にクリミア議会が「リトルグリーンメン」と呼ばれる武装組織に占拠されて、クリミアの首長が解任されて親ロシア派の「新政権」がスタートし、この「新政権」が管理する中でクリミアの帰属をめぐる「住民投票」が行われたことはわざわざ取り上げるに値しないことなのだろうか。この「住民投票」でロシアのクリミア併合に「圧倒的な賛成」があり、セバストポリ市では「有権者数を上回る圧倒的な賛成」があったというこの選挙は「有効」なものなのだろうか。

ウクライナ東部地域にはロシア軍が普通に出入りできる「親ロ派」地域が軍事力によって作り出され、ウクライナ派住民に対する圧迫が「ロシア帝国運動」という国際テロ組織によってなされてきたが、そんなことはわざわざ取り上げるに値しない些末なことなのだろうか。

「ロシア帝国運動」はその名の通り、強大なロシア帝国の復活を願う組織であり、まさにプーチンの親衛隊のような存在だが、それはヤヌコビッチ政権をひっくり返すクーデターには参加していなかったから、別に問題になるものではないのだろうか。あるいは「アゾフ大隊」こそが絶対悪に決まっているから、これと対立関係にある「ロシア帝国運動」は善に決まっていて問題にならないというのだろうか。

ロシアやベラルーシなども加入している「欧州安全保障機構」(OSCE)の監視団の査察によって、ウクライナにおける双方の暴力の抑止に動くのが正しいと考えたウクライナ側と、OSCE監視団の排除に動いたロシア側とにおいて、ロシア側の方が実は正しいと見ることが本当に問題ないことなのだろうか。武力では圧倒的に劣るウクライナが透明性を確保することでロシアに対抗しようとすることは適正ではなかったのだろうか。

OSCEの監視団は停戦合意違反が双方において日常茶飯事に行われていることは認めていても、親欧米派の側にも親ロ派の側にも「ジェノサイド」と呼べるようなことは認めていない。OSCEの言うことなど当てにならず、プーチンの言うことのほうが信頼できるなどとなぜ思えるのか。

私は今回の戦いにおいて、プーチン・ロシアが完膚なき敗北を喫して、力の論理の行使を国際政治から排除されるように導くことが世界の平和にとって極めて重要であると考える。そしてこれは台湾を武力を使ってでも奪い取ろうとしている中国に対して最大の牽制になり、我が国の安全保障に直結することでもあると考えている。

だがそれは、西側と価値観を異にするプーチン・ロシアの体制を力づくで排除する危険な動きだというのだろうか。どうしてそこまでしてプーチン・ロシアが持ち出す力の論理を部分的であれ擁護しようとするのか、私には全く理解できない。

私はウクライナの人たちにも自由や民主主義を享受する権利はあるし、それを子や孫の世代に引き継いでいく努力を払っていることに敬意を表するべきではないかと思っている。

私のこの見方はネオコンに毒された危険なものだというのは正当なものなのか。冷静に考え直してもらいたい。

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