元徴用工訴訟で韓国政府が、日韓企業が拠出する財団設立による和解案を19日発表したが、原告団は被害者の意見が反映された案ではないとして、被告企業の韓国資産差し押さえ手続きを予定通り、最終段階の現金化まで進める構えを見せている。三菱重工業を相手取った元勤労挺身(ていしん)隊と元徴用工の支援団体は21日、同社の本社(東京)を訪れ、7月15日までに対話の意思を示さなければ「追加的な措置に出るしかない」と通告した。
韓国政府の和解案は、日本企業と原告との間の当事者協議を促し、資産差し押さえの強制執行を避ける狙いがあったが、案を巡る政府と被害者団体の溝は大きく、現金化手続きを止める歯止めにはなっていない。
原告団が韓国政府に提案していたのは、訴訟外の徴用工被害者を含めて救済する財団案で、韓国政府が中心になって支援する内容だった。原告の支援団体関係者は「勝訴した原告だけ救済する財団案は受け入れられないと韓国政府に伝わっているはずなのに」と突然の韓国政府の和解案に戸惑いを隠せない。
被害者団体と連携した財団案を青瓦台(大統領府)に働きかけていた姜昌一(カンチャンイル)韓日議員連盟会長は「提案の一部しか反映されていない」と課題を指摘する一方、「今月末のG20(主要20カ国・地域首脳会議)前に何か案を出さなければならないという中で出てきたもので、市民社会と国会が連携してさらに韓国政府と議論を重ねる必要がある」と話している。
賠償命令が下された日本製鉄(旧・新日鉄住金)と不二越訴訟の原告団は5月1日、賠償額の現金化に向けて韓国資産の売却申請を行ったが、三菱重工訴訟の原告団は同社が2010~12年に和解協議に応じたことがあるため、他社に比べ時間をかけて協議を呼びかけていた。【ソウル堀山明子】