日本では未公開の2002年のイスラエル映画
「ケドマ 戦禍の起源」をみました!!

イスラエル出身のアモス・ギタイ監督の作品で、
正確にはイタリア・フランス・イスラエルの合作となっています。

ネット上では、高評価と低評価が入り交じり、
平均的には、5点満点で3点を割る程度の評価ですが、
テーマにかなり興味があったので観てみました。

このアモス・ギタイ監督の作品は3作借りているので、
追々他の2作も紹介する予定です。






$CINEMA Hunterの映画紹介ブログ







第2次世界大戦終結後間もない1948年。
ナチスの弾圧から生き延びたユダヤ人たちは、パレスチナに移住する。
彼らはその地で独立戦争に巻き込まれてしまい、
新たな悲劇に見舞われる・・・
という感じの物語。






CINEMA Hunterの映画紹介ブログ

CINEMA Hunterの映画紹介ブログ






この映画は、パレスチナ問題に関心の無い人にとっては、
恐ろしく退屈な映画だと思います。

船で海を渡ってきたユダヤ人たちが、戦争に巻き込まれていく姿を
ドキュメンタリーのように淡々と映し出し、
これといった結末もなく終わっていく物語だからです。

個人的には、数十年に渡って続いているパレスチナ問題
始まりの部分
に興味があったので、こんな単調な内容でも
最初から最後まで画面に釘付けで、かなり楽しめましたグッド!

ナチスドイツによるユダヤ人迫害を描いた作品は
数多く観ましたし、イスラエルパレスチナの紛争を描いた作品も、
いくつか観ましたが、ナチスの手を逃れたユダヤ人たちが、
故郷のパレスチナに戻ってくる姿を描いた作品と出会ったのは
これが初めてです。

当時の映像は、テレビのドキュメンタリーなどで観ることが
出来ますが、その時の人々の心情はどうだったのか、
どんな思いを抱えて、パレスチナにやってきたのか
など、
映画でなければ体感できない部分を期待して、この作品を
観ましたが、この映画は確かにその期待に応えてくれました。






CINEMA Hunterの映画紹介ブログ

CINEMA Hunterの映画紹介ブログ






この映画の見所の一つは、短期間の間に、
迫害される側から迫害する側へと変貌していく
ユダヤ人たちの姿
です。

映画の序盤、ナチスによって殺された家族や友人の事で涙し、
恐ろしい迫害の記憶や心の傷に悩まされているユダヤ人たちは、
パレスチナに上陸後、訳も分からぬうちに銃を持たされ、
半強制的に戦闘にかり出され、一般市民であるにも関わらず、
気がつけば戦争の真っ只中に立っている
という感じです。

突然のユダヤ人襲来に、住み慣れた土地を追い出され
逃げ惑うパレスチナの人たち。ついさっきまでナチスから受けた
仕打ちに涙していたユダヤ人たちは、今度は迫害する側となって、
パレスチナアラブ人たちに襲いかかります。

この場で、ユダヤ人パレスチナ人のどちらが正義かなど、
論じるつもりは全くありませんし、個人的な立場を
表明するつもりもありませんが、どの民族にも共通の
人間の本質を見たような気がしました。


イスラエルのこの映画や、ナチスを描いたドイツ映画を見て感心するのは、
自分たちがしてきた事を美化したり、言い訳したりせずに、
直視して描いている事
です。こういう映画を観るたびに、
日本でもこんな映画が生まれてくれたらと、思ってしまいます。





CINEMA Hunterの映画紹介ブログ

CINEMA Hunterの映画紹介ブログ






どなたかのレビューによると、アモス・ギタイ監督自身が、
「イスラエル・アラブ」といわれるイスラエルに生まれたアラブ人
なんだそうです。
この監督の生い立ちは良く知りませんが、複雑な立場で生きてきた
人だからこそ、こういう映画を作り得たのかもしれません。

ラストで気がふれて語り続ける男性。彼の言っている事の全ては
理解出来ませんでしたが、これが監督の訴えたい事なのかなと思いました。

個人的には、もっともっと続きが観たい映画でした。
出来ればどのように建国に至るのかまで観てみたかったです。
いつかアモス・ギタイ監督が、この先の出来事を映像化してくれる事を
期待したいです。

この映画は万人受けしないどころか、おそらくごく一部の人にしか
評価されない作品だと思えるので、オススメは出来ませんが、
パレスチナ問題の起源や、ユダヤ人の歴史に関心のある方には、
一押ししたい映画です
グッド!










「ケドマ 戦禍の起源」予告編