新しいサービスやガジェットをつくっても「どうしてうまく売れないんだろう・・・」と悩む起業家や会社は多く、そんなときに「キャズム理論(キャズムセオリ)」という言葉が出てきますが、いったい何のことなのか、説明します。

キャズム理論ってなに?

キャズム理論は、新しい技術やサービスが「一部の熱狂的な人」から「普通の大多数」へ広がる過程で、どこに「大きな壁(溝)」があるのかを説明するマーケティングの理論で、この「溝」のことを英語で Chasm(キャズム)といって、新しい製品がここを越えられないと、世の中に広まらずに消えてしまうことが多いのです。

キャズム理論を支える「5つの人グループ」

キャズム理論を理解するには、人の「新しくて変なものを買うタイミング」が違うことを知る必要があり、これは「イノベーター理論」という別の理論がもとになっていて、買う人を以下のように5つに分類します。

イノベーター(革新者)

最初の最初に飛びつくタイプで「新しいこと」や「リスク」が好きで、試すことが目的に近い。

アーリーアダプター(早期採用者)

少し考えて飛びつくタイプで「将来性」や「先見性」を重視し、ケチらず投資する。

アーリーマジョリティ(早期多数派)

「流行になってから」「実績が出てから」考えるタイプで、大多数の「普通の消費者」に近い考えを持つ。

レイトマジョリティ(後期多数派)

身の回りで普通になってから買うタイプで、保守的で、リスクやトラブルを嫌う。

ラガード(後発遅延者)

本当に最後、やっと使うタイプで、新しいものに疑いが強く、必要に迫られない限り使わない。

この中で、イノベーター+アーリーアダプターを「初期市場」、アーリーマジョリティ+レイトマジョリティ+ラガードを「**主流市場(大衆市場)」と呼ぶことが多いです。

キャズム(溝)はどこにある?

キャズム理論の一番のポイントは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に、大きな溝が存在するという点。

アーリーアダプター

目的は「新しい体験」や「先見性」であり、不完全な商品でも、自分で使い方を想像して飛びつける

アーリーマジョリティ

目的は「実用性」「リスクを減らす」ことであり「友達が使って」「実績がある」「サポートがしっかり」が必要。

この「価値観の違い」が、新しい製品が「一部の熱狂的な人」から「普通の大多数」に広がるときの「壁」=キャズムを作ります。

キャズム理論が起きるイメージ

たとえば、こんなシーンをイメージしてみてください。

新しいAIサービスを開発して、イノベーターとアーリーアダプターに声をかけたら、結構売れた。けれど、それ以上の「普通の人たち」には「何がいいのかよくわからない」「怖い」「サポートが不安」と言われ、売上が伸びない・・・。

この「初期市場では評判がいいのに、大衆市場には広がりきれない」状態が、キャズム理論で言う「キャズムの中に落ちてしまった」イメージです。

どうしてキャズムを越えるのがむずかしいのか?

キャズムが越えられない主な理由は、買ってくれる人の「価値観」がまったく違うから。

- 初期市場(イノベーター・アーリーアダプター)向けのメッセージとしては、「最先端」「革新的」「未来を切り開く」など、夢や可能性を強調することでアピールすることができるのですが、主流市場(アーリーマジョリティ以降)向けのメッセージとしては、「仕事の効率が上がる」「お金を減らせる」「失敗を防げる」など、具体的なメリットと安心感が必要となります。

つまり一部の熱狂的な人向けの売り方をそのまま、普通の人に当てはめても、うまく伝わらないのです。

キャズムを越えるためのポイント

新しいサービスや製品が「一部のヒット」から「大ヒット」に変わるには「キャズムをどうやって乗り越えるか」が勝負になり、ここでは、初心者でもイメージしやすい3つのポイントを紹介します。

ターゲットを絞りこむ(Niche Focus)

いきなり「全国の普通のあなた」に訴えず、「こういう業界の人」「こういう悩みを持っている人」に絞って、最初の「成功事例」をつくったほうが、主流市場に広げやすくなります。

たとえば「中小企業の経理の人」限定でサービスを極めて、その人たちは「すごく便利」という声を集めてから、他の業種にも広げていく、というイメージ。

具体的なメリットを伝える

「革新的」「最先端」だけでは、普通の人は判断できませんから「毎月2時間、ルーチン作業が減る」「月3万円のコスト削減ができる」 といった数字や、今の生活/仕事との具体的な比較を伝えることが重要です。

「安心感」をつくる

導入事例や testimonials(利用者の声)、見積もりや返金保証、しっかりしたサポート体制のような、こういった「安心の仕組み」を用意して「最初に試すのはちょっと怖いけど、やってみても大丈夫そうだ」と感じてもらうことが大事です。

キャズム理論のまとめ(初心者向け)

キャズム理論とは、新しい技術やサービスが「一部の熱狂的な人」から「普通の大多数」に広がるときに、その間にある「大きな溝(キャズム)」を説明する理論であり、初期市場と主流市場の価値観・必要とする情報が大きく違うため、同じ売り方ではうまくいかない。

それを乗り越えるためにも、ターゲットを絞って成功事例を作り、数字や具体的なメリットを伝えつつ、安心感・サポートを整える