狂気の電力政策~金田一の特別コラム | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

狂気の電力政策~金田一の特別コラム

「こんな簡単なことどうして分からないんだろうね。我々は、ただ茫然と、じーっと見ているだけなのかね。何とかしなくちゃならないね」。

 いつだったか、テレビで山田洋次監督が語っていた言葉である。我が国、原発政策を語っていた。国民的人気を誇る山田洋次氏が語っても、何も響かない、それが我が国原発政策である。

 再三延期されてきた東北電力女川原発2号機の再稼働が正式に決まった。本年9月頃だそうだ。宮城県の知事がゴーサインを出しているので再稼働は間違いないだろう。

 折しも、能登半島地震ではまたしても、我が国原発の脆弱性が志賀原発で所見された。先の地震で変圧器の配管が破れて、絶縁や冷却用の油が漏出。今も変圧器は部品が手に入らず、修理の見通しは立っていないという。

 この変圧器、耐震Cクラスで、現状では最も耐震性の強いものとのこと。これが壊れて修復不能なのだから、地震の恐ろしさは、我々の想像をはるかに超えていると考えなければならない。福島第一原発の廃炉作業の状況を見ても、遅々と進まず、廃炉に30年~40年かかるというが、その間のコストを国民は直視していないのではないか。

 福島廃炉における東京電力への他電力会社の不満は大きい。なぜ、福島のつけを我々が負担しなければならないのか、株主に言い訳できないと語気を強める。しかし、福島の現状は、明日は我が身、電力会社は、せっかくの原発を捨てる気はさらさらない。半官半民という中途半端な管理体制が、目の前でこれほどの問題が山積しても、多様なエネルギー政策との曖昧模糊な方針から野放しにされているのが現状だろう。

 力を入れるべきは、再生可能エネルギーであり、最も問題となっている送電網の整備であるはずなのに、ここにメスが入る様子はない。

 聞けば、再生可能エネルギーである太陽光、風力等による発電を電力会社によって制御される「出力制御」が2023年には急増し、45万世帯分(19.2億kW)の電気が使われずに捨てられたという。

 この出力制御は、停電を防ぐもので、電気はそもそも発電量と使用量をそろえないと周波数が乱れて停電してしまう。このため電力会社が、出来すぎた電気の購入をストップしてしまうのである。国内原発1基100万kWクラスを年間100%稼働(実際は85%程度)すれば87億kWの電力が作れるとのこと。原子力は簡単に制御できないので、出力制御は最後発となる。

 能登半島地震では、近々稼働が予定されている東京電力所管の新潟県柏崎刈羽原発は問題なかったというが、この原発は、07年7月のM6.8の中越地震では冷却関係の機器類が破損した前科つきである。再稼働に不安を感じるのが普通である。

 目の前のコストと金儲けだけで走っては、我が国電力政策は迷走してしまう。核のゴミ問題も受け入れ自治体が北海道で手が挙がっているが、続く自治体は無いと聞く。増え続ける核のゴミをどうするのか。いったい全体、これほどの問題を抱えている原発のどこが安全でクリーンなのか。

 福島での処理水も廃炉にあわせ30年間は流し続けるという。ちょっとやそっとなら問題ないだろうが、同じ場所に30年間も流し続けて本当に大丈夫なのだろうか。仮に安全基準を満たしているとしても、2度とこのような問題を起こさないエネルギー政策に進むのが、福島の教訓として我が国に与えられた使命なのではないだろうか。

 分かっているのに欲望のために突き進む。その結果が、どのような悲劇を生むかは歴史が証明している。

 金田一拝

■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
参加無料!先着順!アナリストレポート進呈!特典付き!
株式講演会&企業IRフェアin東京
2024年02月26日(月) 東京証券会館 17時30分受付開始 18時開演
お申込み→ https://www.ir-channel.jp/event/tk240226.html
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
参加無料!参加抽選会付き!先着順!特典付き!
KCR総研2024株式講演会in大阪
2024年02月24日(土) マイドームおおさか  13時30分受付開始 14時開演
お申込み→ https://www.ir-channel.jp/event/os240224.html
■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━