株は上がるが日銀出資証券は下がるの不思議~金田一コラム | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

株は上がるが日銀出資証券は下がるの不思議~金田一コラム

 日経平均が3万5千円を超えて久しい。いよいよ、バブル時の最高値を超えようかという動き。この動きに関し素直に嬉しいというより憂うると思うのは、私だけであろうか。

 「八苦騒ぐこと無し」日経平均は、1989年に最高ザラバ値の3万8,957円44銭を付けた。(私は、この年の最高値を「八苦(はっく)騒ぐことなし」とゴロで暗記したが、いよいよ、バブル後最高値を抜けようかという局面に来ている。

 しかし、この動きに素直に喜べない筋がいくつかある。裏金問題に憂う政治問題も最たることだが、ウクライナ、イスラエルの紛争に加え、何より、パッシブ運用による一部の銘柄しか上昇していない現実。

 つまり、バブル期と違い景気が良くて株が上がっているのではなく、一部の銘柄への需給関係だけで上昇している現実。日本社会の格差は益々、開き、上昇している銘柄の企業実態は、何も変わっていないのに、超大型株だけが上がっているという現実。この動きをどう考えればいいのであろうか。

 日本が、確実に経済実態が前へ進んでいるのであれば、この動きを頼もしく見ることもできる。しかし、実態は、円安が進み、物価だけが先行し、実質賃金は、ずっと下がり続け、庶民の生活は、困窮を極めている。

 GDPは、ドイツにも抜かれ、世界第4位に陥る始末。このまま、ずるずると、日本経済は低落していくのであろうか。諦念に近い憂いが日本全体に広がる中での、日経平均株価の躍進である。

 何とも言えない気持ちになるのも分かるのではないか。上場3800銘柄のうち、せいぜい400銘柄程度の構成で右往左往しているのが、今の日経平均である。

 とても、今の日本経済全体の実情を表しているとは言い難く、本気で、日の沈む国ではなく日の上る国としての再起をかけて官民ともに知恵を結集しなければならない時に来ている。

 日経平均がこんなに上昇しているのに、何故、こんなに国民に閉塞感があるのか。その一つの解として、日銀出資証券の価格推移を証拠として上げたい。

 日経平均がこんなに上がっているのに、それに反比例して、日銀出資証券は、ずっと下がり続けている。



 思うに、日銀出資証券の推移がこの国の実態であろう。現状の株高は、タコが足を食って伸びているに過ぎない。この実態から脱却するためには、本当の意味での成長戦略を見出すしか方法がない。政治の責任は、あまりにも大きいと言わざるを得ないのが、今の正直な気持ちである。

金田一拝