禁じ手の楽天グループ | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

禁じ手の楽天グループ

 楽天グループの子会社、楽天銀行が上場したのはついこの前。IPOは成功し、楽天グループは700億円のキャッシュを手にした。

 そして、昨日、楽天証券HDのIPOを申請。まだ上場承認されたわけではないが、相次ぐ連結子会社の上場には疑問符がつく。

 いうまでもなく日本は、親子上場が素直に認められている珍しい国である。親子上場を完全に否定するわけではないが、子会社の上場は、その先の中長期戦略において、親から切り離すというシナリオがなければならないと私は思っている。

 でなければ、少数株主の利益は、親会社の思いでどうにでもなるわけで、配当政策しかり、その後のMBOによる上場廃止など、どうとでも親会社の意向でなるわけであり、要は出したり、引っ込めたりすることができる子会社上場は、やはり大きな問題点があると言わざるをえない。

 それでも、子会社の成長戦略に繋がる将来の独立を見据えての上場であれば、納得できなくもないが、今回の相次ぐ楽天グループの子会社上場は、親会社の救済のための資金調達が目的であり、極めて後ろ向きなもので、よくこうした上場を東証も承認しているとあきれてしまう。

 正論を言えば、楽天本体が生き延びたいのであれば、子会社を売却して資金調達をするのが筋であろう。しかし、資本市場の論理はそうはなっていないようだ。こうした巨大企業の子会社IPO申請では、ソフトバンクGのアーム米国市場申請も脳裏をよぎる。

 英国市場と米国市場の2重上場を画策し、NYSEとナスダックを巡って競わせた結果、アームの米国上場申請は実施され、年内に公開される見通しである。米国においても資本市場においては目先の金だけが重要で、あらゆるガバナンスは無視されていく。将来的に不利ななるかもしれない少数株主も目先の利益だけで動く。

 しかし、アームに関していえば、その前に米国NVIDIA社への売却交渉が独禁法の観点から待ったが掛けられ、苦肉の策としてIPO申請していることから、今回の楽天グループのケースとは少し違うかもしれない。

 子会社活用での資金調達は、東芝とキオクシアHD(旧東芝メモリ)との関係も記憶に新しい。売却後のキオクシアHDも上場延期で迷走に迷走を重ねているが、東芝の場合も虎の子の売却が先だった。その東芝も、もがきにもがいた末、上場廃止が決定した。

 巨大企業の子会社に関しては、その活用に関して、悲喜こもごもであるが、やはり根底にはガバナンスが最重要なのではないか。例え、子会社上場が、成功しても、その金で楽天グループが携帯事業を立て直すことが本当にできるのか?禁じ手に手を出した楽天グループのその後の行方には一抹の不安がよぎる。

金田一