ワーケーションよりバケーション | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

ワーケーションよりバケーション

 ワーケーションよりバケーション。日本人が働きすぎと言われて久しい。確かに。OECDの調査によると日本人の労働時間は、世界28位。こう聞くと、働き方改革をしているのに全然、改善されていないと感じる人もいるかもしれないが、実は、先進国の中では、下の方なのである。

 ちなみに上位先進国には、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、イタリアがランクイン。韓国に至っては、世界堂々の5位で、日本の労働時間より1.2倍も長い。

 この統計は、2021年のものなので、2016年のものと比較すると、日本は100時間ほど労働時間は短くなっているということであるが、統計にはサービス残業は省かれているほか、減少の理由は短期労働者が増えたからということもあり、素直には喜べないのが現状である。

 働きすぎとはいえるが、統計では労働時間は減少しているのに過労死の数は増えているという。こうした傾向を見る限り、必ずしも、過労死が労働時間と結びついているわけでもなさそうである。

 私は、多くの日本人労働者が、本当の意味での休息、バケーションを取っていないことが原因の一つではないかと考えている。人は何のために働き、お金を稼ぐのか。こうした素朴な疑問に答えとして生活のためとするのは至極当然である。

 しかし、人はパンのみで生きているわけではない。働くことは、稼いだお金を、どれだけ自分の人生を豊かにするかであり、使ってこそ、働き甲斐もあるというものである。

 この点、日本人は長期の休息というものを大人は知らない。子供のころ、夏休みが待ちどおしかったように、休みに関してワクワクするような心を失ってしまっているのではないだろうか。長期の休息を許さない、こうした風潮の日本の社会が働くものにとって途方もない閉塞感を与えている。

 1か月も休んでいれば「君の席はもうないから」といった長期休暇に関する偏見を捨てなければならない。有休消化すらままならない、おかしな風習を今こそ、日本人は変えるべきである。

 かくいう私も、働き詰めで、退職時の有給休暇を除けば1週間以上の休暇を取ったことがなかった。ここでいう休暇とは、単に休むと言う事ではなくバケーションである。

 そのバケーションをしみじみ感じたのが、9月から10月にかけての北海道一周旅行である。東北周遊も含め17泊18日と時間をかけて満喫した。金もかかるが、こうした楽しみ方を日本人は知らなさすぎるのではないか。

 欧米人は、バケーションのために働いている感覚があると思う。労働のご褒美として、長期の旅に出る、趣味に没頭するなど、人生を豊かにする術を心得ているように思える。日本人が学ぶべき人生の処世術といえるだろう。

 ちなみに、各地を転々とするワーケーションは、難しいしいことを知るべきだ。どこか避暑地でワークすることはできても、旅のワクワク感を感じながら働くのは無理がある。ワーケーションよりバケーションを充実させる世の中にしたいものである。

金田一