100円寿司に見る値上げの功罪 | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

100円寿司に見る値上げの功罪

 久々にお寿司が食べたくなり、100円寿司のあきんどスシローへ行った。ランチ時には混むと考えたので、開店11時過ぎに入店。スムーズに席に着くことができた。

 スシローといえば、100円寿司の雄であるが、おとり広告で景品表示法違反で措置命令を受けたことは記憶に新しい。店内は、いつもと変わらないように見えたが、影響はいかばかりか。味も変わらず、美味しく頂いたが、会計にはいささか驚いた。

 体感としては、以前食べたときの約1.5倍程度であろうか。消費税分を考慮しても、決して安いとはいえない金額になってきている。スシローでは、現在150円の皿がメインであろうか。300円の皿は1枚しか食べなかったが、100円で食することができたネタは以前と比べ激減している印象を受けた。

 折しも、くら寿司も、今後、220円の皿を4割にすると発表があった。現状、110円の皿が7割だが、今後は6割にすると。値上げの背景には、原材料価格の高騰に加え、円安の影響も大きいとは考えるが、安易な値上げは、今後どのような影響を回転寿司業界に及ぼすのであろうか。

 回転寿司は、確かにそれなりに美味しいが、美味しいといっても、その味には限界がある。大阪にがんこ寿司というチェーン店があり、こちらは回転寿司より高めではあるが、味は比較にならないほど美味しい。寿司は、鮮度が命だから、100円寿司のネタには限りがある。今回のスシローでは、ウニは300円だったが、他のネタを食べながら、その味から頼む気にはなれなかった。

 100円寿司が、皿枚数を考えることなく、気軽に食べれる時代は、いよいよ終末期に入ったと考える。本日の会計から考えると、あくまでも私見だが、がんこ寿司の方が、はるかによいと感じる。東京神田界隈では、手ごろな値段で握ってくれる江戸前寿司も多い。

 そう考えると、安易に値上げを行う回転寿司チェーンは、いよいよ迷走の領域に入ったと考えざるを得ない。値上げは、一見、企業利益が増大するように見えるが、中価格帯の寿司チェーンと競合し、外食レストラン全体でみても、その特長をなくしてしまうリスクを孕んでいる。

 現状、何でも値上げが許容されるような風潮から、ここぞとばかり、値上げをする企業が目立つが、質もサービスも変わらないのに、価格だけが値上がりすると、いずれ消費者からそっぽを向かれる危険性が十分にあるといえるだろう。

金田一