熊本産アサリ偽装の根は深い | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

熊本産アサリ偽装の根は深い

 熊本産アサリが実は中国産アサリだったことは報道の通り。食品偽装問題は、以前から食品業界に根強く残っており、一向に減る気配がないが、今回の偽装は消費者としてよりも一日本人として許しがたい偽装である。

 と、勢いよく拳を振り上げてみたものの、よくよく調べてみると国の食品表示法では、輸入したアサリでも干潟など国内で育てた期間が原産国より長い場合は「国産」と表示するとなっているそうな。これが、偽装の温床とも言われており、いったい国産とは何なのかとつくづく考えさせられてしまう。

 報道ではこの点はあまり触れられていないが、このアサリ、聞けば地元の漁協も知っていて生活のために黙認していたというが、一旦、海に放流し、その後1週間から数か月で引き揚げ販売していたという。とどのつまり、この問題は、国内の養殖期間が短いから問題なのか。おかしな話である。

 どこまで本当で、どこまでが嘘なのか分からないが、仮に稚貝を放流し、育成して出荷していたのなら生態系を全く無視していることにもなるのだが、この点はどうなのか。日本近海で採れる純粋な日本産を駆逐する行為であるし、この偽装がばれた後も貝は生き続ける。しかも、事は、熊本県だけに及ばない。長崎や鹿児島など、近県の貝にも影響を今後も与え続けると考えていいだろう。

 もはや、熊本産はおろか近県で採れる貝は、中国産かハイブリッド、純粋な国産なんて全く無くす行為を平然と、国も了承し漁業関係者が実施していたことになる。これが、期間だけの問題なら北海道産や愛知県産はどうなのか。もはや国産など存在しないのではないかと勘繰ってしまう。

 この問題、偽装ばかりが騒がれているが、その辺の科学的見解はどうなっているのだろうか。生態系を犯す罪や食品表示法の在り方など、その点の真相究明とこの落とし前をどうつけるのかが全く議論されていないことが気がかりで仕方がない。

金田一