今、「日本沈没」をやらなくても! | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

今、「日本沈没」をやらなくても!

 TBSのドラマ日曜劇場で「日本沈没」が始まったという。チャンネルをひねって、たまたま知ったが、相当な肝の入れようで開始と同時に30言語以上に翻訳されNetflixを使って3時間後に190以上の国地域に世界同時配信もするというのだから関係者の力の入れようが分かる。

 いわずと知れた小松左京氏原作のSF小説だが、このドラマは私も小学校時代に見た記憶が鮮明にあるので、大変面白いドラマではあると思っている。テレビの画面に映る最後に沈没していくのが、実家金沢の石川県だったので、ああ、到頭、私が住んでいるところも沈没してしまったと子供心に思ったものである。

 まあ、ドラマなのだからどうでもいいような気がするが、今、「日本沈没」をやらなくてもいいのではないかと思っている。そうでなくても日本を取り巻く世相は暗い。非常事態宣言が解除されたとはいえ、コロナとの戦いはまだ、続いており、倒産件数がこれだけ低いのだから、景気がいいのは間違いないのだが、その裏付けは、世界各国で実施した中央銀行の金融緩和のお陰である。倒産件数が少ないと言っても、実質倒産状態にあるようなゾンビ企業まで救済していることは間違いなく、米国などで実施されるテーパリング政策一つを取ってをみても、明らかに、今までとは違う転換点にある。

 そのうえ、台湾海峡で、日に日にキナ臭さが増しており、今すぐではなくとも、いつ何が起こってもおかしくない情勢となってきている。言うまでもなく、台湾有事の際は、日本は前線に近く、大変な状況になることは間違いない。米国頼みは、確かに大切だが、政治家が先頭を切って、我が国にとって一番どうすればいいのかを本気で議論して前へ進めていく時である。しかしこのタイミングで宏池会が政権を握るというのも、素直に頷けない。

 皆がハッピーな気分になれるはずのロイヤルウエディングも、国民の半数が納得しておらず、国民の心に暗い影を落としている。聞けば地球温暖化をテーマに現代版にアレンジしているというが、その狙いは良いにしも「日本沈没」という原題そのものが今の日本では、どうも引っかかる。

 ドラマは、原作とは違うのだから、今回の脚本や結末はどうのようなものか知る由もないが、このような状況下では、期待して見る気にもなれない。本当に日本が沈没して欲しい国が居る以上、日本の大手放送局がせっせと翻訳して世界配信をしている姿は、自虐的で何とも言えない気分になる。内容も見ずに批判するのは、無意味とは思うが、自身においては、このタイミングは最悪の状況と考える。

金田一